株式会社城南鉄工様 業務フロー分析・AI社員配属提案書
サンプル(架空企業)。展示会のAX診断でお聞きした内容(業種・規模・使っているシステム・仕事の入口・困りごと・情報の置き場所・特定の人に頼っている業務・手順の文書化)から、この形式の提案書を作成します。2〜6章の現状の記述は、同業種・同規模・同じシステム構成の企業で最も多い姿の推定です。
目次
- 企業概要・システム全体像
- 人手が支えている箇所の一覧
- As-Is: 見積・受注ワークフロー
- As-Is: 手配・工程進捗ワークフロー
- As-Is: 業務知識の所在と属人性
- As-Is: AI社員を受け入れる土台の現状
- To-Be: 見積・受注ワークフロー(AI社員配属後)
- To-Be: 手配・工程進捗ワークフロー(AI社員配属後)
- システム構成(To-Be)
- 導入ステップ
- セキュリティ設計
- 提供体制
- 御社版の作成にあたって
付録A. 実装項目
付録B. 試用期間(PoC)の検証計画
1. 企業概要・システム全体像
| 項目 | 内容 |
|---|
| 社名 | 株式会社城南鉄工(架空) |
| 事業 | 金属部品の受託加工(切削・溶接・板金)。多品種少量・小ロット中心 |
| 従業員数 | 約70名 |
| 拠点 | 第一工場 / 第二工場 |
| 組織 | 営業部 / 生産管理課 / 製造部(第一工場・第二工場) / 品質保証課 / 管理部 |
| 生産管理 | TECHS-BK(現在は工程進捗の管理を中心に利用) |
| 見積・外注手配 | Excel(担当者ごとのファイル) |
| 基幹システム | 自社開発の基幹システム(旧オフコンから継承) |
| 会計 | 勘定奉行 |
| 勤怠 | ジョブカン勤怠管理 |
| グループウェア | Microsoft 365(Teams・Outlook) |
| ファイル共有 | 社内ファイルサーバ・NAS(図面・検査記録・過去見積) |
| CAD | AutoCAD |
| 仕事の入口 | FAX / 電話 / メール(図面添付) / 対面・持ち込みの紙図面 / EDI(大手1社) |
| 見積・受注の担当 | 見積の値決めは工場長。受注登録は営業部・生産管理課が兼務 |
現行システム構成図
情報の置き場所を、システムとシステム外(紙・記憶・個人の手控え)まで含めて描きます。
flowchart TD
fax["FAX複合機"] -->|"紙"| eigyo["営業部・生産管理課"]
denwa["電話"] -->|"口頭"| eigyo
taimen["対面・持ち込みの紙図面"] -->|"紙"| eigyo
mail["Outlook<br>(引き合い・図面添付・仕様連絡)"] --> eigyo
edi["EDI(大手1社)"] --> eigyo
eigyo -->|"手入力"| excel["Excel 見積書・外注手配表<br>(担当者ごとの個人ファイル)"]
eigyo -->|"手入力"| techs["TECHS-BK<br>(工程進捗)"]
eigyo -->|"手入力"| kikan["自社開発の基幹システム<br>(旧オフコンから継承)"]
excel -->|"売上・支払額を手で転記"| bugyo["勘定奉行"]
kikan -->|"一部の実績を転記"| bugyo
fs["ファイルサーバ・NAS<br>図面(AutoCAD)・検査記録・過去見積<br>(置き場所とファイル名は担当者ごと)"] -->|"記憶を頼りに探索"| eigyo
memo["工場長・ベテランの記憶と個人の手控え<br>(単価の勘所、協力先の適性、検査の合否基準、金型の状態)"] -->|"口頭で参照"| eigyo
genba["第一工場・第二工場の現場<br>(進捗は現物と口頭)"] -->|"聞き取り・週次会議"| eigyo
teams["Teams<br>(社内連絡)"] --> eigyo
jobcan["ジョブカン勤怠<br>今回の診断範囲外"]
2. 人手が支えている箇所の一覧
御社の業務は、システムとシステムの間を担当の方々が人手でつなぐことで、毎日回っています。この章では、その人手が支えている箇所を一覧にします。支えている箇所には負担が集中しやすく、担当の方の不在や繁忙期に綻びやすいためです。展示会で伺った内容と、業種×規模×システム構成からの推定を並べ、出所の列で区別します。推定の行は「同じ構成の企業で最も多い姿」であり、御社に当てはまるかの確定は診断セッションで行います。
| 業務の場面 | いま人手で支えていること | 起きやすい負担・リスク | 出所 |
|---|
| 見積の値決め | 図面を読み、過去実績と経験を突き合わせて工場長が単価を決めている | 工場長の不在時に見積が出せず、客先の問い合わせにも答えられない | 伺った内容 |
| 類似図面の探索 | 置き場所とファイル名が担当者ごとに分かれた図面を、記憶を頼りに探している | 探索が積み上がり、探し当てられないと単価の根拠が経験だけになる | 伺った内容 |
| 受注入力 | FAXで届く注文の読み取りと打ち直し | 数量や単位の取り違えが起きやすい | 伺った内容 |
| 外注・自社の振り分け | どの加工を任せられるか、どの協力先が今空いているかの判断 | 判断が工場長に集中し、不在時に手配が止まる | 伺った内容 |
| 工程進捗の把握 | 現場に聞きに行く確認と、週次の進捗会議でのすり合わせ | 確認そのものに人の時間がかかり、遅れの発見が会議まで待つ | 伺った内容 |
| 検査の合否判断 | 目視での判断 | 判断の基準が人により振れ、判断の根拠が記録に残りにくい | 伺った内容 |
| 材料在庫 | 重量管理と本数管理の換算を毎回手計算 | 計算違いと、引当可否の回答の遅れ | 伺った内容 |
| 金型の管理 | 使用回数とメンテナンス時期が記録として残っていない | 交換や整備の判断が現場の感覚に委ねられ、突発停止につながりやすい | 伺った内容 |
| 図面の改訂管理 | 改訂図面のどれが最新かを担当者が記憶で見分けている | 旧版での手配・加工による手戻り | 推定 |
| 納期回答 | 工場と協力先の負荷状況を見て工場長が納期を回答 | 回答が1人に集中し、営業の折り返しが待ちになる | 推定 |
| 受注情報の登録 | 同じ受注内容をExcel手配表・TECHS-BK・自社基幹システムへそれぞれ入力 | 入力の重複と、システム間の食い違い | 推定 |
| 外注の発注・支払照合 | 発注控えと単価・納期の記録が個人のExcelに残り、請求と突き合わせている | 照合のたびに控えを遡る調査が発生する | 推定 |
| 売上計上・会計連携 | Excelの売上集計を勘定奉行へ手で転記 | 締めごとの転記と確認、差異が出ると伝票を遡る | 推定 |
| 検査記録の保管 | 検査成績書の作成とファイルサーバへの保管、客先要求時の抽出 | 該当ロットの記録を探す作業が個別に発生する | 推定 |
一覧を眺めると、人手が支えているのは、個々のシステムの中ではなく、システムとシステムの間、またはシステムと記憶の間です。支え方の型は3つに集約されます。図面と注文が紙・口頭・添付のまま届き、人が読み取って入力していること、判断に使う知識(単価の勘所、協力先の適性、検査の合否基準、単位の換算)が記憶と個人の手控えにあること、システムと現場の間の照合(進捗・在庫・売上)を人がまとめて行っていることです。これは担当の方々の工夫で業務が成立している姿であり、同時に、その方々に負担が集中する構造でもあります。
診断セッションで確認する点
- 推定の行は、御社にも当てはまりますか。すでに運用や仕組みでカバーされている行はどれですか。
- この一覧に載っていない箇所で、現場の負担になっているものはありますか。
- この中で、時間または金額の影響が最も大きいのはどれですか。
3. As-Is: 見積・受注ワークフロー
多品種少量の受託加工のため、引き合いが常時複数並行し、そのうち一部が受注に進む姿と推定します。引き合いの入口はFAX・メール添付・持ち込みの紙図面・電話に分かれ、EDIは大手1社のみです。
3-1. 引き合いから見積提出まで
| 工程 | 担当 | 備考 |
|---|
| 引き合いの受領(FAX・メール添付・持ち込み図面・電話) | 営業部 | 図面の形式は紙・PDF・DWGが混在 |
| 図面の読み取り(材質・寸法・公差・加工内容の把握) | 営業部→工場長 | 判断が要る箇所は工場長へ回る |
| 類似図面・過去見積の探索 | 工場長・営業部 | ファイルサーバを記憶を頼りに探す |
| 過去実績の単価・工数の参照 | 工場長 | 見つからない場合は経験で見積もる |
| 自社加工か外注かの振り分け | 工場長 | 協力先の手空きと得意な加工を記憶で判断 |
| 納期の回答 | 工場長 | 工場と協力先の負荷状況から判断 |
| 見積書の作成・提出 | 営業部 | Excelの個人ファイルで作成 |
ヒアリングでは「前の担当の基準がちゃんと引き継がれてないんで、工場長が休むと出せないんですよ。お客さんから問い合わせが来ても答えられない」とのことでした。値決めの工程が1人に集まる構造が、そのまま回答速度に表れていると推定します。
3-2. 見積作成のフロー
flowchart TD
hikiai["引き合いの受領<br>(FAX・メール添付・持ち込み図面・電話)"] --> zumen["図面の読み取り<br>(材質・寸法・公差・加工内容)"]
zumen --> ruiji["類似図面・過去見積の探索<br>(ファイルサーバを記憶を頼りに探す)"]
ruiji -->|"見つかった"| jisseki["過去実績の単価・工数を参照"]
ruiji -->|"見つからない"| keiken["工場長の経験で見積もる"]
jisseki --> tanka["工場長が単価を決定"]
keiken --> tanka
tanka --> gaichu["自社加工か外注かの振り分け<br>(協力先の手空きを記憶で判断)"]
gaichu --> noki["負荷状況から納期を回答"]
noki --> teishutsu["Excelで見積書を作成・提出"]
zumen -->|"工場長が不在"| taiki["回答待ち<br>(提出が翌営業日以降へ)"]
3-3. 受注登録のフロー
flowchart TD
chumon["注文の受領<br>(FAX・電話・メール・EDI)"] --> tsugo["見積・図面との突き合わせ<br>(図番・改訂・数量・単位)"]
tsugo -->|"照合できた"| nyuryoku["Excel手配表・TECHS-BK・<br>基幹システムへそれぞれ入力"]
nyuryoku --> tehai["材料手配・外注手配"]
tehai --> zairyo["材料在庫の引当<br>(重量と本数の換算を手計算)"]
tsugo -->|"図番の改訂が不明<br>数量・単位が読み取れない"| kakunin["工場長・営業担当に口頭確認"]
kakunin --> nyuryoku
3-4. 診断セッションで確認する点
- 過去見積と実績工数は、図番と結び付いた形で残っていますか。担当者ごとのExcelに分かれていますか。
- 図面の改訂(A版・B版など)は、どこを見れば最新と判断できますか。
- 受注内容は、Excel手配表・TECHS-BK・基幹システムのうち、どれを正としていますか。
- 見積の提出までにかかる時間は、案件の種類によってどのくらい差がありますか。
4. As-Is: 手配・工程進捗ワークフロー
受注後は、材料手配と外注手配が並行し、進捗は現場の現物と口頭で把握されている姿と推定します。TECHS-BKは工程進捗の管理に使われており、手配と実績原価の面はExcelが担っている前提で描きます。
4-1. 受注から出荷までのタイムライン
| 時点 | 工程 | 担当 | 備考 |
|---|
| 受注直後 | 受注内容の登録、図面の手配 | 営業部・生産管理課 | 3系統への入力が発生 |
| 受注直後 | 自社・外注の最終振り分け、協力先への打診 | 工場長・生産管理課 | 電話とFAXでのやりとり |
| 材料手配時 | 在庫の引当と発注(重量・本数の換算) | 生産管理課 | 換算は都度の手計算 |
| 加工中 | 進捗の確認(現場に行く、電話で協力先に聞く) | 生産管理課 | 記録に残るのは確認後の入力分 |
| 週1回 | 進捗会議で全案件の状況をすり合わせ | 生産管理課・製造部・営業部 | 遅れの発見と対策の場になっている |
| 検査時 | 目視を含む合否判断、検査成績書の作成 | 品質保証課・ベテラン検査員 | 判断の基準は各人の経験に依存 |
| 出荷後 | 売上の集計、外注請求との照合、勘定奉行への転記 | 管理部 | 個人のExcel控えを遡る場面がある |
4-2. 進捗把握と手配のデータフロー
flowchart LR
genba["第一工場・第二工場の現場"] -->|"口頭・現物確認"| seisan["生産管理課"]
kyoryoku["協力先"] -->|"電話・FAX"| seisan
seisan -->|"聞き取り結果を手入力"| techs["TECHS-BK<br>(工程進捗)"]
seisan -->|"手配の控え"| excel["個人のExcel 手配表"]
techs --> kaigi["週次の進捗会議<br>(状況のすり合わせ)"]
excel --> kaigi
kaigi -->|"遅れ・前倒しの判断"| taio["納期調整・応援・外注の追加"]
excel -->|"売上・支払額を手で転記"| bugyo["勘定奉行"]
kensa["検査記録<br>(ファイルサーバ)"] -->|"客先要求時に抽出"| seisan
4-3. 診断セッションで確認する点
- TECHS-BKに入る進捗は、どの工程まで、どの頻度で入力されていますか。
- 協力先の手配実績(単価・納期・品質)は、どこに残っていますか。
- 材料の単位換算は、材質ごとの比重や定尺の一覧が文書としてありますか。
- 検査の目視項目は、限度見本や写真の形で基準が残っているものがありますか。
5. As-Is: 業務知識の所在と属人性
見積と手配、検査を成立させている知識の置き場所を整理します。
| 業務知識 | 現在の置き場所 | 参照する場面 |
|---|
| 単価の勘所(加工の難所、段取り、材料歩留り) | 工場長の記憶、個人のExcel | 見積のたび |
| 過去の類似案件と実績工数 | ファイルサーバの図面・過去見積(所在は記憶) | 見積のたび |
| 図番と改訂の対応、最新版の見分け | 担当者の記憶、ファイル名の慣習 | 見積・手配・加工の指示時 |
| 協力先の適性(任せられる加工・材質・寸法) | 工場長の記憶 | 外注判断のたび |
| 協力先の手空き状況 | 工場長の記憶と電話でのやりとり | 外注判断・納期回答のたび |
| 検査の合否基準(目視項目) | ベテラン検査員の経験 | 検査のたび |
| 材料の単位換算(重量と本数、定尺、端材の扱い) | 担当者の手控えと都度の計算 | 材料引当・発注のたび |
| 金型の状態(使用回数、整備の履歴) | 現場の記憶 | 段取り・整備の判断時 |
| 客先ごとの提出書類の要求(成績書の様式・納品書の書式) | 営業・品質保証の手控え | 出荷・提出のたび |
ISOの関係で手順書は整備されているものの、ヒアリングでは「見積の勘所とか外注先の選び方は書いてないです」とのことでした。文書になっている範囲と、記憶に残っている範囲の線が、そのまま属人性の輪郭になっています。
属人性は、担当者が抜けたときに何が止まるかを並べると、そのまま見えてきます。止まるものの一覧は、文書に起こすべき知識の目次でもあります。
| 抜けると止まる・遅れる業務 | 支えている知識 | 現在の担い手 |
|---|
| 見積の単価決定と客先への回答 | 図面の読み取り、過去実績の解釈、値決めの基準 | 工場長 |
| 類似案件の探し当て | 図面の置き場所とファイル名の来歴 | 工場長・一部の営業担当 |
| 外注・自社の振り分けと協力先の手配 | 協力先ごとの適性と手空きの見方 | 工場長 |
| 納期の回答 | 工場と協力先の負荷の読み | 工場長 |
| 検査の合否判断(目視項目) | 客先ごとの許容と限度の感覚 | ベテラン検査員 |
| 材料の引当可否の即答 | 単位換算と端材の在り処 | 生産管理課の担当者 |
6. As-Is: AI社員を受け入れる土台の現状
2〜5章は業務の流れと知識の姿でした。この章は、AI社員を配属するために必要な土台が現時点でどこまで揃っているか、いわばAI ready度を整理します。まず全体を一覧で示し、システム別の接続の詳細と、◯に変わるまでの道のりを続けます。判定はシステム構成からの推定で、確定は診断セッションで行います。判定の根拠を埋める作業は、付録Aの実装項目に対応づけています。
判定は4値です。◯ 足りている / △ 一部足りている・版による / ✕ これから整える / ? 診断セッションで確認。
| 観点 | 判定 | 根拠 |
|---|
| 業務知識が文書になっているか | △ | ISO関連の手順書は整備済み。見積の勘所・外注先の選び方・目視検査の基準は文書になっていない(5章) |
| どれを正とするかが決まっているか | △ | 進捗はTECHS-BK、手配と売上はExcel、自社基幹も併存。運用は安定しているが、正の明文化はこれから |
| 図番・品目・単位の軸が揃っているか | △ | TECHS-BKに工程と品目の軸がある一方、図面ファイル・過去見積との紐付けと、重量/本数の単位換算は人が担っている |
| AIに渡す範囲を区切る権限の土台 | △ | Microsoft 365のアカウント基盤がある。ファイルサーバ・NASの共有は範囲の区切りが粗いと推定 |
| 仕事の入口がデータで届くか | ✕ | FAX・電話・持ち込みの紙図面が中心。EDIは1社、メール添付は一部 |
| 使っているシステムへの接続 | △ | Microsoft 365は接続手段が充実。TECHS-BK・勘定奉行・自社基幹は版・作りによる。Excelはデータ化から(6-1) |
| 承認者・役割を決められるか | ? | 情シスの体制と、見積・発注の承認経路は診断セッションで確認 |
△が並びますが、いずれも第一・第二工程で埋まる種類のもので、どの工程で◯に変わるかは6-2に対応表があります。
6-1. 接続手段
接続のしやすさの列は、当社カタログの一般情報(◎ 公式APIが充実 / ○ APIあり / △ 版・契約による / ✕ 手作業前提)で、確定は導入時に版・契約を確認して行います。
| 項目 | 接続のしやすさ | 現状(推定) | 配属に足りているか | 足りない場合に埋める作業 |
|---|
| Microsoft 365(Teams・Outlook) | ◎ 公式API(Graph)が充実 | 引き合いメールと社内連絡の経路として利用中 | 足りている | |
| 社内ファイルサーバ・NAS | ○ ネットワーク経由で直接読める(参照範囲の整理が前提) | 図面・検査記録・過去見積を保管。共有の区切りが粗い | 一部不足 | 参照範囲の確定と共有の棚卸し(付録A C-04) |
| ジョブカン勤怠管理 | ○ APIあり(利用申請による) | 今回の診断範囲外 | 今回は対象外 | |
| TECHS-BK | △ CSV・APIでの基幹連携(版・構成による) | 工程進捗を中心に利用 | 版・構成の確認が必要 | 版と構成が分かれば接続方式と可否を当社から提示(付録A C-02) |
| 勘定奉行 | △ 奉行クラウドはAPIあり。オンプレ版はファイル連携(版による) | 計上と支払の記録先 | 版の確認が必要 | 同上 |
| 自社開発の基幹システム | △ 作りによる。DB直結・ファイル連携などを個別に確認 | 旧オフコンから継承し現在も利用 | 作りの確認が必要 | データベース構成の確認のうえ接続方式を提示(付録A C-02) |
| AutoCAD(図面ファイル) | △ 図面ファイル経由が中心(クラウドAPIは構成による) | DWG・PDFがファイルサーバに保管 | 一部不足 | 図面ファイルからの属性抽出と図番台帳の作成(付録A M-09、D-01) |
| Excel(見積・外注手配) | ✕ データ化から始める | 担当者ごとの個人ファイルに分散 | 不足 | 様式の集約と項目の整理(付録A M-08、D-03) |
| FAX | ✕ 紙のまま | 紙で回収して手入力 | 不足 | 複合機のPDF転送設定またはクラウドFAX(付録A C-01) |
| 電話・持ち込みの紙図面 | ✕ 口頭・紙のまま | 記録が残らない、または紙のまま保管 | 一部不足 | 通話メモの運用と、持ち込み図面のスキャン運用の相談(付録A C-05) |
| EDI(大手1社) | ? 診断セッションで確認 | 1社のみ稼働 | 方式の確認が必要 | 接続方式(Web-EDI・ファイル授受など)を診断セッションで確認 |
6-2. AI readyまでの道のり
冒頭の一覧で✕と△が付いた観点は、10章の導入ステップの中で次の順に◯へ変わります。
| 工程 | ◯に変わる観点 | 具体 |
|---|
| 第一工程 | 仕事の入口 / システムへの接続 / 権限の土台 / 図番・品目・単位の軸 | FAXのPDF化と持ち込み図面のスキャン運用で入口をデータにする。TECHS-BK・勘定奉行・自社基幹の版と作りを確認して接続する。ファイルサーバの参照範囲を整理する。図面ファイルから図番・改訂・材質を抽出して台帳にし、材料の単位換算を辞書に登録する |
| 第二工程 | 業務知識の文書化 / 正の明文化 | 個人のExcelの取り込みと工場長・検査員へのヒアリングで、単価の勘所・協力先の適性・目視検査の基準を意味辞書と業務マニュアルに起こす。受注・進捗・売上のどれを正とするかを明文化する。以後は判断のたびに追記されて厚くなる |
| 第三工程 | 残る ? の確定 | 見積・発注の承認者と役割の指名を確定し、EDIの接続方式を確定して対象業務を広げる |
6-3. この章の読み方
足りない項目が並びますが、いずれも第一工程(10章)の中で当社が主導して埋める種類の作業で、御社の業務を止めるものはありません。埋める作業の中身と順序は、業務の実物を拝見しないと確定できないため、診断セッションの議題とします。
図面と検査記録がすでに電子データとしてファイルサーバに集まっていること、Microsoft 365が社内の連絡経路として定着していることは、この規模の受託加工業では恵まれた条件です。ヒアリングでは「データにはなってるんですけど、置いてある場所もファイル名もバラバラなんで、結局記憶を頼りに探し回ってます」とのことでした。データが存在することと、探し当てられることの差が、整備の中心になります。整備は、置き場所とファイル名を現場に直していただくのではなく、AI側に図番の台帳を作って現状の置き方をそのまま読めるようにする方向で進めます。
7. To-Be: 見積・受注ワークフロー(AI社員配属後)
配属後の姿は、御社固有の情報(図番と改訂の対応、類似案件の手がかり、単価の勘所、協力先の適性、材料の単位換算)を整理したうえに成り立ちます。この章の直前に差し込んだ立体の地図は、その整理の成果物の姿です。下段が情報の置き場所(接続に導入時の確認が要るものは接続候補と表示)、中段が御社の業務で共通に扱う実体とその関係、上段がAI社員に任せる仕事です。上段の仕事を選ぶとその仕事が使う実体・元データ・読み替えが光り、実体を選ぶと判断材料がどこから来てどの仕事につながるかをたどれます。実体をつなぐ線は、システムに記録済みのつながり、導入で整理して作るつながり、合っているかを照合するつながりの3種に分かれます。
そのうえで、2章で挙げた人手の支えを、それぞれどこでAI社員が引き継ぐかを対応づけます。
| 2章で挙げた箇所 | 配属後 |
|---|
| 図面と経験による単価の決定 | 見積担当AIが類似案件と実績工数を根拠として添え、見積の下書きを作る(この章) |
| 類似図面の探索 | 図番台帳と属性の辞書をもとに見積担当AIが抽出する(この章) |
| FAX注文の読み取りと打ち直し | 受注担当AIが読み取って起票する(この章) |
| 図面の改訂の見分け | 図番台帳で最新版を判別し、AIが改訂差異を提示する(この章) |
| 受注情報の3系統への入力 | 正の置き場所を決め、受注担当AIが起票して他系統へ展開する(この章) |
| 外注・自社の振り分け | 生産管理担当AIが協力先の適性と直近の手配実績を候補として提示する(8章) |
| 納期回答 | 生産管理担当AIが工程負荷と外注状況を添えて回答の下書きを作る(8章) |
| 工程進捗の把握と週次会議 | 生産管理担当AIが日次で進捗を集めて報告し、会議は判断の場に寄せる(8章) |
| 材料在庫の単位換算 | 換算の定義を意味辞書に登録し、生産管理担当AIが引当可否を回答する(8章) |
| 外注の発注・支払照合 | 生産管理担当AIが発注控えを記録し、請求との照合の下ごしらえを行う(8章) |
| 売上計上・会計への転記 | 売上集計と勘定奉行の計上額の照合を生産管理担当AIが日次で行う(8章) |
| 検査記録の保管と抽出 | 成績書の下書きとロット単位の紐付けをAIが担う(8章) |
| 目視検査の合否判断 | 判断基準の文書化と記録の様式化から着手する。判断そのものをどこまで任せるかは診断セッションで範囲を相談(8章および診断セッション) |
| 金型の使用回数・整備の記録 | 記録の持ち方(どの単位で何を残すか)から診断セッションで扱う |
7-1. 配属案
| 業務 | 現状の担当 | 配属後の担当 | 人の役割 |
|---|
| 類似図面・過去見積の探索 | 工場長・営業部(記憶を頼りに探索) | 見積担当AI | 提示された候補の妥当性の確認 |
| 見積単価の算出 | 工場長の経験と過去実績 | 意味辞書の単価の勘所を参照して見積担当AIが下書き | 単価の決定と承認、判断理由の提供 |
| 図面の読み取りと仕様の整理 | 営業部・工場長 | 見積担当AIが材質・寸法・公差・加工内容を抽出 | 読み取れない項目の判断 |
| FAX・メール・EDIの受注登録 | 営業部・生産管理課(兼務) | 受注担当AI | 例外の判断、業務マニュアルの承認 |
| 図面の改訂の確認 | 担当者の記憶 | 図番台帳を参照して受注担当AIが判別 | 台帳に載せる知見の提供と承認 |
7-2. 見積担当AI・受注担当AIの職務定義
| 項目 | 見積担当AI | 受注担当AI |
|---|
| 職務 | 図面と仕様の読み取り、類似図面と過去実績の抽出、見積の下書きの作成 | 注文の読み取り、見積・図面との突き合わせ、受注の起票 |
| 接続先 | ファイルサーバ(図面・過去見積)、Outlook、FAX受信、Excel見積様式、TECHS-BK、自社基幹システム | FAX受信、Outlook、EDI、TECHS-BK、自社基幹システム、Excel手配表 |
| 単独で実行できる操作 | 類似案件の抽出、実績工数の集計、下書きの作成と根拠の提示 | 見積と図番が一致した受注の起票、在庫引当の照会 |
| 人の承認が必要な操作 | 見積単価の確定、客先への提出 | 単価が見積と不一致の受注、新規客先、図面の改訂が最新でない受注 |
| 勤務形態 | 引き合いの着信の都度処理。朝に未処理の一覧を報告 | 毎朝7:00に夜間着分を一括処理。日中は着信の都度処理 |
7-3. 配属後の見積フロー
flowchart TD
hikiai["引き合いの着信<br>(FAX・メール添付・EDI)"] --> ai["見積担当AIが図面と仕様を読み取り"]
ai --> kensaku["図番台帳から類似図面・過去見積・実績工数を抽出"]
kensaku --> shitagaki["見積の下書きを作成<br>(根拠となる過去案件を併記)"]
shitagaki --> handan["工場長・営業が単価と納期を判断"]
handan --> teishutsu["見積書を発行・提出"]
handan --> tsuiki["判断の理由を意味辞書・業務マニュアルへ追記<br>(版管理)"]
tsuiki -.->|"以後、同型の引き合いは根拠付きで提示される"| ai
ai -->|"図面が読み取れない<br>類似案件が見つからない"| reigai["例外としてTeamsで報告<br>(不足している情報を整理して提示)"]
reigai --> handan
読み取りに自信が持てない図面や、類似案件が見つからない引き合いは、推測で単価を出さず例外として人に回します。読み取りの精度を約束する方式ではなく、確信の持てないものを人に回す設計で誤った提出を防ぎます。単価の決定そのものは人に残し、AIは決定の材料をそろえる役に留めます。工場長が不在でも、過去実績と根拠が並んだ下書きは出ているため、代理の方が判断できる幅が広がります。
7-4. 配属後の受注登録
flowchart TD
chakusin["注文の着信<br>(FAX・メール・EDI)"] --> ai["受注担当AIが読み取り"]
ai --> tsugo["見積・図番・改訂・数量の突き合わせ"]
tsugo -->|"一致"| kihyo["正のシステムへ起票し<br>他系統へ展開"]
kihyo --> hikiate["材料在庫の引当照会<br>(単位換算は辞書で解決)"]
tsugo -->|"単価が見積と不一致<br>改訂が最新でない<br>数量・単位が読み取れない"| hokoku["例外としてTeamsで報告"]
hokoku --> hito["営業部・生産管理課が判断"]
hito --> tsuiki["判断結果を業務マニュアルと意味辞書に追記"]
tsuiki -.->|"以後、同型の注文はAIが処理"| ai
電話と持ち込みの紙図面は当面人が受け、入力と図面の取り込みだけをAIへの依頼に置き換えるところから始めます。
8. To-Be: 手配・工程進捗ワークフロー(AI社員配属後)
8-1. 生産管理担当AIの職務定義
| 項目 | 内容 |
|---|
| 職務 | 工程進捗の収集と報告、外注候補の提示と手配控えの記録、材料の引当可否の回答、売上と計上の照合、検査成績書の下書き |
| 接続先 | TECHS-BK、自社基幹システム、Excel手配表、ファイルサーバ(検査記録)、勘定奉行、Teams |
| 単独で実行できる操作 | 進捗の集計と遅れの検知、協力先候補と実績の提示、単位換算を含む在庫照会、売上と計上額の照合と差異一覧の作成、成績書の下書き |
| 人の承認が必要な操作 | 外注先の決定と発注、納期の客先回答、検査の合否判定、仕訳の確定 |
| 勤務形態 | 毎日朝夕に定時実行。月次の締め前は日次で照合を実行 |
8-2. 配属後の1週間・1か月
| 時点 | 工程 | 担当 |
|---|
| 毎朝 | 前日までの工程進捗と、遅れが見込まれる案件の一覧がTeamsに届く | 生産管理担当AI→生産管理課 |
| 毎朝 | 材料の引当状況と、手配が必要な材料の一覧を提示 | 生産管理担当AI |
| 引き合い・受注のたび | 外注候補(加工種別・材質の適性と直近の手配実績)を提示 | 生産管理担当AI→工場長 |
| 納期照会のたび | 工程負荷と外注状況を添えた回答の下書きを提示 | 生産管理担当AI→営業部 |
| 週1回 | 進捗会議。状況の確認は済んでおり、遅れへの対策の判断から始まる | 生産管理課・製造部・営業部 |
| 検査時 | 図番と客先要求から成績書の様式と記入項目を下書き | 生産管理担当AI→品質保証課 |
| 毎日 | 売上集計と勘定奉行の計上額の照合、差異と根拠(該当伝票・受注番号)を報告 | 生産管理担当AI→管理部 |
| 外注請求の受領時 | 発注控えと請求内容の突合、差異の候補を提示 | 生産管理担当AI→管理部 |
8-3. 変化の姿(推定)
| 項目 | 現状 | 配属後 |
|---|
| 見積の回答 | 工場長の在席が前提。不在時は回答待ち | 根拠付きの下書きが出ており、判断だけを人が行う |
| 類似案件の探索 | 記憶を頼りにファイルサーバを探す | 図番台帳から候補が提示される |
| 工程進捗の把握 | 現場に聞きに行き、週次会議ですり合わせる | 日次で集まり、会議は対策の判断の場になる |
| 外注の判断 | 工場長の記憶に依存 | 適性と手配実績が候補として並び、判断が引き継げる |
| 材料の引当回答 | 都度の手計算 | 単位換算が辞書で解決し、照会に即答できる |
| 売上と計上の照合 | 締め後にまとめて突合 | 日次照合済み。締めの時点で差異一覧が出ている |
| 検査の判断 | 各人の経験に依存 | 基準が文書と記録の形で残り、判断の振れの範囲が見える |
実数の測定は、試用期間中に御社の図面と帳票で行います(付録B)。
9. システム構成(To-Be)
flowchart TD
fs["ファイルサーバ・NAS<br>(図面・検査記録・過去見積)"] --> madoguchi
techs["TECHS-BK"] --> madoguchi
kikan["自社開発の基幹システム"] --> madoguchi
bugyo["勘定奉行"] --> madoguchi
excel["Excel 見積・外注手配表"] --> madoguchi
faxin["FAX受信 / Outlook / EDI"] --> madoguchi
madoguchi["各システムとAIの間の窓口(システムごとに設置)<br>・アクセスできる範囲の制御(権限)<br>・全操作の記録(監査ログ)<br>・意味辞書(図番と改訂、類似の手がかり、単価の勘所、協力先の適性、材料の単位換算、正となる数字の定義)"]
madoguchi --> mitsumoriAI["見積担当AI"]
madoguchi --> juchuAI["受注担当AI"]
madoguchi --> seisanAI["生産管理担当AI"]
mitsumoriAI -->|"報告・例外照会"| teams["Teams"]
juchuAI -->|"報告・例外照会"| teams
seisanAI -->|"報告・例外照会"| teams
teams <-->|"判断・承認"| hito["営業部・生産管理課・品質保証課・管理部"]
- 既存システムの入れ替えは行いません。TECHS-BK・自社開発の基幹システム・勘定奉行・ファイルサーバは現行のまま、AI専用の窓口を追加します。
- 図面の置き場所とファイル名の付け方も現行のままとし、図番台帳の側で対応を持ちます。
- AIがシステムに触れる経路は窓口だけに限定され、窓口を通らないアクセスはできません。
意味辞書に登録する内容の一覧は、付録A-2にまとめています。
10. 導入ステップ
第一工程の内容は、6章で足りないとした項目にそのまま対応します。
| 工程 | 内容 | この時点で使える状態 |
|---|
| 第一工程 | 窓口の接続(ファイルサーバ・TECHS-BK・自社基幹・勘定奉行・FAX受信・Outlook)と、図番台帳・単位換算を中心とした意味辞書の初期整備 | 散らばった図面・過去見積・実績を、意味を踏まえて横断検索・集計できる。「昔似た図面がなかったか」を記憶に頼らず引ける |
| 第二工程 | 見積担当AIと受注担当AIの配属。FAX・メール・EDIの引き合いと受注に絞って開始 | 見積の下書きが根拠付きで出る。受注の定型入力がAIに移り、人は例外判断に移る |
| 第三工程 | 生産管理担当AIの配属、対象業務の拡大 | 進捗の日次化、外注候補の提示、売上と計上の日次照合 |
導入後に社内に残るものは次の3点で、いずれもファイルの形を持ちます。
- 業務マニュアル。例外対応の追記を含む、版管理された手順書
- 意味辞書。図番と改訂の台帳、単価の勘所、協力先の適性、材料の単位換算といったデータの読み方の登録集
- 監査ログ。AIがいつ何を参照しどの操作をしたかの全記録
利用をやめた場合も、この3点は読める形式のファイルとして手元に残ります。ISOの手順書との関係では、業務マニュアルは既存の手順書に載っていない範囲(見積の勘所、外注先の選び方、目視項目の判断基準)を補う位置づけになります。
他の手段との比較
| 外注(BPO) | RPA・AI-OCR | Copilot | AI社員 |
|---|
| 例外が起きたとき | 委託先が対応する | 処理が止まり、人が拾う | 人が操作して対処する | 人が判断し、判断結果が手順に追記される |
| ノウハウの残り先 | 委託先の会社 | 設定した担当者 | 使った個人 | 自社の業務マニュアルと意味辞書 |
| 記録 | 委託先の管理に依存 | 実行ログのみ | 残らない | 全操作の監査ログ |
| やめたとき | ノウハウごと失われる | 設定だけが残る | — | マニュアル・辞書・ログがファイルで残る |
導入後も続く運用
業務は変わり続けます。新しい客先、協力先の入れ替え、図面の改訂の増加、使用システムの更新。月額利用の中では、例外判断のマニュアル・辞書への反映、接続先の変化への追従、任せる業務の拡張が続きます。AI社員の仕事の範囲は、配属時の定義から運用の中で広がっていきます。金型の記録や目視検査の扱いも、記録の持ち方が定まったところから順に範囲に入ります。
実装項目の一覧は付録A、試用期間の検証計画は付録Bにまとめています。
11. セキュリティ設計
11-1. データの経路と実行の条件
| データ | 通る経路 | 通らない経路 |
|---|
| 図面・仕様書 | 窓口を経由してAI社員が参照 | 外部AIモデルの学習には使用しない |
| 客先ごとの単価・見積情報 | 権限のある範囲でのみ参照 | 権限のない参加者がいる場では表示しない |
| 協力先の単価・手配実績 | 権限のある範囲でのみ参照 | 客先向けの資料には自動で載せない |
| AIモデルの利用 | 処理に必要な範囲のデータを推論時にAIモデルへ渡す | 学習・保存には使われない設定で利用。要件に応じてプライベート環境にも対応 |
| 実行記録 | 監査ログとして自社環境に保存 | 社外に送信しない |
- システム操作の実行は、依頼した本人・その場に同席する全員・AI社員自身の3者すべてに権限がある場合に限られ、未登録の操作・身元不明の参加者は拒否が既定値です。
- 見積の提出、外注の発注、検査の合否判定、仕訳の確定には人の承認が必ず挟まり、許可・拒否を問わずすべての実行が監査ログに残ります。
- 客先から預かった図面は、案件と権限の範囲を単位として参照範囲を区切ります。
- 提供環境は1社ごとに独立し、他社とデータベースを共有しません。
11-2. 導入時によく確認される事項
| 確認事項 | 回答 |
|---|
| データの保存先と環境分離 | 1社1環境で提供。保存先と取り扱いは導入時に書面で明示。詳細資料は診断セッションで提供 |
| 客先からの図面の取り扱い | 秘密保持の条件に合わせて参照範囲と保存先を設定。条件の確認は導入前に行う |
| 既存のCopilot等との関係 | 併存。個人の文書作成はそれらのツール、担当業務の遂行はAI社員と役割が分かれる |
| 例外の多い業務への適用 | 頻出の例外はマニュアルに載せ、一点物の判断は人に残す。載る範囲と載らない範囲の線引きを導入前に文書で提示 |
| 解約時のデータ | 業務マニュアル・意味辞書・監査ログは読める形式のファイルとして残る |
| 診断セッションの参加者 | 技術担当が同席。希望に応じてNDA締結後に実施。議題は事前に固定 |
12. 提供体制
| 場面 | 当社が行うこと | 御社にお願いすること |
|---|
| 導入(第一工程) | 窓口の接続、図番台帳と意味辞書の初期整備、業務の聞き取りと現場の観察 | 業務知見の提供(ヒアリング対応)、正とするルールの判断 |
| 導入(第二工程) | AI社員の設定、業務マニュアルの初稿作成、試用期間の運営 | 例外の判断、マニュアル内容の承認 |
| 運用開始後 | 定例の振り返り、例外傾向の分析、任せる業務の拡張提案、接続先の変化への追従 | 判断と承認の継続 |
導入から運用まで、技術担当と導入支援担当が付きます。問い合わせは担当窓口に一本化します。
13. 御社版の作成にあたって
本書は架空企業のサンプルです。2〜6章のAs-Isはシステム構成からの推定であり、御社の実際の業務・数字・例外ルールを反映していません。
御社版の作成は、30分の診断セッションから始めます。セッションでは次の3点を持ち帰っていただけます。
- 2章の一覧を御社の実際に合わせて確定した、人手が支えている箇所の一覧表
- お使いのシステムの版と作り(TECHS-BK・勘定奉行・自社開発の基幹システム・EDI)に応じた、接続方式と可否の回答
- どの業務から、どんな体制で、どの程度の規模感で始められるかの初期見立て
セッションは技術担当が同席し、ご希望に応じてNDA締結後に実施します。議題は事前にお送りする内容に固定します。お申し込みは、ブースの担当者にお声がけください。
(セッションを予約されない場合、こちらからの営業連絡は行いません。)
付録A. 実装項目
実装の中心は、各システムとAIの間の窓口(標準規格MCPによる接続)の構築と、業務ナレッジ(意味辞書・業務マニュアル)の整備の2つです。項目をID付きで整理します。
A-1. 窓口の接続
| ID | 接続先 | 実装内容 | 読み書きの範囲 | 工程 |
|---|
| M-01 | FAX受信 | 複合機からのPDF転送を受けて注文書・図面を取り込む | 読み取りのみ | 第一 |
| M-02 | Outlook | 引き合い・注文メールと添付図面の取得 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-03 | Teams | 報告・例外照会・承認依頼の送受信 | 送受信 | 第一 |
| M-04 | ファイルサーバ・NAS | 図面・過去見積・検査記録の検索参照 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-05 | TECHS-BK | 工程進捗・受注情報の参照と起票。接続方式は版・構成により異なる | 参照+起票(起票は承認付き) | 第一〜第三 |
| M-06 | 自社開発の基幹システム | 受注・実績の参照。データベース直結かファイル連携かを個別に確認 | 参照(書き込みは承認付き) | 第一〜第三 |
| M-07 | 勘定奉行 | 計上額・支払残高の参照。版により接続方式が異なる | 読み取りのみ | 第一 |
| M-08 | Excel 見積・外注手配表 | 様式の整理のうえで参照と下書きの作成 | 参照+下書き作成 | 第一〜第二 |
| M-09 | 図面ファイル(AutoCAD・PDF) | 図番・改訂・材質・寸法などの属性抽出 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-10 | EDI(大手1社) | 受注データの取得。方式は診断セッションで確認 | 読み取りのみ | 第三 |
すべての窓口に、アクセス範囲の制御と全操作の記録が標準で備わります。既製の接続部品がある接続先はそれを使い、ない接続先は個別に開発して納品します。
A-2. 意味辞書の整備
| ID | 辞書 | 内容 | 整備の方法 |
|---|
| D-01 | 図番と改訂の台帳 | 図面ファイルと図番・改訂・客先・品目の対応、最新版の判別 | 図面ファイルからの属性抽出と、担当者へのヒアリングで補完 |
| D-02 | 類似の手がかり | 材質・加工種別・寸法帯・公差・工程の並びなど、似ていると判断する軸 | 過去見積と実績の分析、工場長へのヒアリング |
| D-03 | 単価の勘所 | 過去実績の単価と工数、段取りの考え方、材料歩留り、値決めの経緯 | 個人のExcelの取り込みと工場長へのヒアリング |
| D-04 | 協力先の適性 | 加工種別・材質・寸法の可否、手配実績(単価・納期・品質)、手空きの見方 | 手配表の取り込みと工場長へのヒアリング |
| D-05 | 材料の単位換算 | 重量と本数の換算、材質ごとの比重・定尺、端材の扱い | 生産管理課へのヒアリングと発注実績からの抽出 |
| D-06 | 検査の合否基準 | 目視項目の判断基準、限度見本の所在、客先ごとの許容 | ベテラン検査員へのヒアリングと過去の判定記録の整理 |
| D-07 | 客先ごとの提出要求 | 成績書の様式、納品書の書式、送付先 | 営業・品質保証の手控えの文書化 |
| D-08 | 正となる数字 | 受注・進捗・売上の正はどのシステムのどの値か、計上のタイミング | 生産管理課・管理部へのヒアリング |
A-3. 業務マニュアルの整備
| ID | マニュアル | 内容 |
|---|
| K-01 | 見積作成 | 図面の読み取りから類似案件の抽出、下書き作成までの手順と、AIが単独で進めてよい条件 |
| K-02 | 受注登録 | 見積・図番との突き合わせから起票までの手順と、系統間の展開のルール |
| K-03 | 手配・進捗報告 | 外注候補の提示、進捗の収集、遅れの報告の形式 |
| K-04 | 検査記録 | 成績書の下書きの作成手順と、判断結果の記録方法 |
| K-05 | 例外対応 | 例外の型(図面が読めない・類似案件がない・単価不一致・改訂不明)ごとの報告先と判断の記録方法 |
| K-06 | 追記の運用 | 判断結果をマニュアル・辞書へ反映する手順と版管理。ISO手順書との関係の整理 |
A-4. AI社員の設定
| ID | 項目 | 内容 |
|---|
| A-01 | 見積担当AIの定義 | 職務・接続先・権限・勤務形態(引き合いの都度処理+朝の未処理報告) |
| A-02 | 受注担当AIの定義 | 職務・接続先・権限・勤務形態(毎朝7:00の定時実行+着信の都度) |
| A-03 | 生産管理担当AIの定義 | 職務・接続先・権限・勤務形態(毎日朝夕の定時実行。締め前は日次照合) |
| A-04 | 承認フロー | 見積提出・外注発注・検査合否・仕訳確定をTeams上で承認する経路の設定 |
A-5. 開始前に一緒に確認する事項
いずれも第一工程の中で当社が主導して進めます。御社に単独でお願いする作業はありません。
| ID | 項目 | 内容 |
|---|
| C-01 | FAXのデータ化 | 複合機のPDFメール転送設定、またはクラウドFAXの導入 |
| C-02 | システムの版・作りの確認 | TECHS-BK・勘定奉行・自社開発の基幹システムの版と構成をお知らせいただければ、接続方式と可否を当社から提示します |
| C-03 | 図面の現状把握 | 保管場所とファイル名の付け方の棚卸し。置き方は変えず、図番台帳の側で対応を持ちます |
| C-04 | ファイルサーバの権限整理 | AIに参照させる範囲の確定と、不要な共有の棚卸し |
| C-05 | 電話・持ち込み図面の扱い | 当面は人が受け、入力とスキャンだけAIに依頼する運用とし、入口の寄せ方を診断セッションで相談 |
| C-06 | EDIの接続方式 | 稼働中の1社の方式(Web-EDI・ファイル授受など)の確認 |
| C-07 | アカウントの発行 | AI社員用のMicrosoft 365アカウントとTeamsのチャネルの用意 |
| C-08 | 役割の任命 | 教育係、例外の判断者、意味辞書の内容を承認する担当(見積・外注・検査それぞれ)の指名 |
A-6. 非機能要件
環境の独立と監査ログの扱いは11章のとおりです(保持期間は導入時に取り決めます)。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 稼働時間帯 | 定時実行(朝・夕)と着信の都度処理。時間帯は設定で変更できる |
| 停止時の業務継続 | 窓口が停止した場合は従来の手作業手順に戻れる。図面・受注・会計のデータは既存システム側にあり失われない |
| 追跡 | 見積1件・受注1件ごとに、参照した図面と実績、起票、承認の履歴を遡って確認できる |
付録B. 試用期間(PoC)の検証計画
導入は試用期間として小さく始め、開始前に合意した水準で本番化を判定します。
B-1. 試用期間の範囲
| 項目 | 内容 |
|---|
| 対象業務 | 類似図面・過去実績の抽出と見積の下書きに絞って開始。受注登録の起票は並行して検証。生産管理担当AIは見積の本番化後に着手 |
| 対象範囲 | 引き合いの多い客先数社と、切削加工の案件から開始し、溶接・板金へ順次拡大 |
| 期間 | 4〜6週間 |
| 運用形態 | 並走運用。従来どおり工場長が値決めし、AIの下書きと突き合わせて差を確認する |
| 体制 | 教育係1名、例外の判断者1名(兼任可)、週次の振り返り30分 |
B-2. 検証項目と指標
本番化の水準は試用期間の開始前に合意し、文書に残します。表の水準は例です。
| 検証項目 | 指標 | 測定方法 | 本番化の水準(例) |
|---|
| 類似案件の抽出 | AIが提示した候補のうち、工場長が根拠として採用した割合 | 提示記録と判断結果の突合 | 対象案件で8割以上 |
| 見積の下書きの精度 | 人が確定した単価と下書きの差の分布 | 提出見積との比較 | 差が一定の範囲に収まる |
| 探索の負担 | 類似図面を探し当てるまでの手数 | 試用期間前後の実測 | 記憶に頼る探索が発生しない |
| 起票の正確さ | 確定後に人の修正が入った起票の割合(数量・単位の誤りを含む) | TECHS-BK・基幹システムの修正記録との突合 | 継続的に数%未満 |
| 例外の収束 | 例外として人に回った件数の週次推移 | 例外報告の件数集計 | 週を追って低下 |
| 資産の蓄積 | 図番台帳の登録件数、意味辞書とマニュアルへの追記件数と版の更新 | 版管理の履歴 | 追記が継続している |
| 不在時の継続性 | 工場長が不在の日に見積の回答が出せた件数 | 回答記録の集計 | 回答待ちが発生しない |
| 統制 | 承認の通過漏れと、監査ログでの追跡可否 | ログの抽出検査 | 漏れゼロ、全件追跡可 |