緑が丘フードサービス株式会社様 業務フロー分析・AI社員配属提案書
サンプル(架空企業)。展示会のAX診断でお聞きした内容(業種・規模・使っているシステム・仕事の入口・困りごと・情報の置き場所・特定の人に頼っている業務・手順の文書化)から、この形式の提案書を作成します。2〜6章の現状の記述は、同業種・同規模・同じシステム構成の企業で最も多い姿の推定です。
目次
- 企業概要・システム全体像
- 人手が支えている箇所の一覧
- As-Is: 発注・在庫ワークフロー
- As-Is: 本部・店舗間の連絡とシフト・勤怠ワークフロー
- As-Is: 業務知識の所在と属人性
- As-Is: AI社員を受け入れる土台の現状
- To-Be: 発注・在庫ワークフロー(AI社員配属後)
- To-Be: 本部・店舗間の連絡とシフト・報告ワークフロー(AI社員配属後)
- システム構成(To-Be)
- 導入ステップ
- セキュリティ設計
- 提供体制
- 御社版の作成にあたって
付録A. 実装項目
付録B. 試用期間(PoC)の検証計画
1. 企業概要・システム全体像
| 項目 | 内容 |
|---|
| 社名 | 緑が丘フードサービス株式会社(架空) |
| 事業 | 地域密着型の食品スーパーの運営(生鮮・惣菜を含むフルライン) |
| 店舗数 | 10店舗超 |
| 従業員数 | 約90名(社員・パート合計) |
| 組織 | 本部(商品部 / 管理部) / 各店舗(店長・売場担当) / 仕入担当 |
| 発注・在庫・仕入 | アラジンオフィス |
| POS | スマレジ |
| 会計 | 弥生会計 |
| 勤怠 | KING OF TIME |
| グループウェア | LINE WORKS(本部・店舗間の連絡を寄せている) |
| 生鮮の発注 | 八面六臂(一部の仕入先) |
| ファイル共有・基幹 | Excel・手作業(在庫表、発注リスト、シフト表、全店報告の集計) |
| 仕事の入口 | 電話 / FAX / メール / チャット(LINE WORKS・Teams) / 対面・紙(御用聞き・手書きの控え) |
現行システム構成図
情報の置き場所を、システムとシステム外(紙・記憶・個人の手控え)まで含めて描きます。
flowchart TD
denwa["電話<br>(精肉・鮮魚の仕入先とのやり取り)"] -->|"口頭"| shiire["仕入担当・店長"]
fax["FAX複合機<br>(仕入先・本部連絡)"] -->|"紙"| shiire
tehai["御用聞き・手書きの控え"] -->|"対面・紙"| shiire
mail["メール<br>(本部連絡・一部仕入先)"] --> tencho["各店舗 店長・売場担当"]
lw["LINE WORKS<br>(本部⇔店舗の連絡)"] --> tencho
urib["売場の目視確認"] -->|"数量を書き取り"| zaiko["Excel 在庫表<br>(店舗ごとの様式)"]
zaiko --> hacchu["Excel 発注リスト"]
shiire --> hacchu
tencho --> hacchu
hacchu -->|"手入力"| aladdin["アラジンオフィス<br>(発注・在庫・仕入)"]
hacchu -->|"一部の仕入先のみWeb発注"| hachimen["八面六臂"]
smaregi["スマレジ<br>(POS・売上実績)"] -->|"実績を参照・手集計"| tencho
aladdin -->|"CSV手動出力"| excel2["Excel 全店報告・棚卸差異の集計"]
smaregi -->|"CSV手動出力"| excel2
excel2 -->|"計上額を手で転記"| yayoi["弥生会計"]
kot["KING OF TIME<br>(打刻・勤怠実績)"] --> tencho
shift["Excel シフト表<br>(希望はチャット・紙で集まる)"] --> tencho
memo["個人の手控え・記憶<br>(発注量の勘、仕入先ごとの癖、<br>催事の実績、棚卸差異の原因の当たり)"]
2. 人手が支えている箇所の一覧
御社の業務は、システムとシステムの間を店長・仕入担当・売場の方々が人手でつなぐことで、毎日回っています。この章では、その人手が支えている箇所を一覧にします。支えている箇所には負担が集中しやすく、担当の方の不在や催事・繁忙期に綻びやすいためです。展示会で伺った内容と、業種×規模×システム構成からの推定を並べ、出所の列で区別します。推定の行は「同じ構成の企業で最も多い姿」であり、御社に当てはまるかの確定は診断セッションで行います。
| 業務の場面 | いま人手で支えていること | 起きやすい負担・リスク | 出所 |
|---|
| 翌日の発注量の決定 | 店長が経験と勘で数量を決めている | 店長の休みで精度が落ち、廃棄と欠品の両方に振れやすい | 伺った内容 |
| 精肉・鮮魚の発注 | 仕入担当の特定の方だけが発注判断と発注操作を行っている | 休みの調整が常に制約になり、代替が立てにくい | 伺った内容 |
| 電話での発注・受注 | 聞き取った品名・数量を人が書き取り、後で納品と突き合わせている | 聞き間違いで違う商品が届き、突合と返品調整に時間がかかる | 伺った内容 |
| 在庫の確認 | 売場の目視で数量を確認し、Excel在庫表と照らして発注リストを作っている | 売場作業と並行するため確認が後回しになり、発注の根拠が人の目に依存する | 伺った内容 |
| 棚卸 | Excelの在庫数と実数の差異の原因を人が遡って調査している | 毎回まとまった時間を要し、原因の特定が特定の方の勘に寄る | 伺った内容 |
| シフト作成 | ぎりぎりに集まる希望を店長が手作業で組んでいる | 作成が締め直前に集中し、急な欠勤時のヘルプ調整も店長に集まる | 伺った内容 |
| 本部からの連絡 | FAX・メール・LINE WORKSに分かれた連絡を、店舗側が拾い集めている | 経路が複数のため店舗によって見落としが起きる | 伺った内容 |
| 発注の教育 | 発注を教えられる方が店舗に一人しかおらず、横について伝えている | 独り立ちまで時間がかかり、教える側の時間も取られる | 伺った内容 |
| 全店の報告集計 | 各店から集まる報告をExcelでまとめている | 店舗数の増加に比例して集計の時間が伸びる | 伺った内容 |
| 発注実績の記録 | 電話・FAX・手書き控えの発注が、アラジンオフィスへ後から入力されている | 入力が後になる分、発注済み数量が見えない時間帯が生じる | 推定 |
| 値入・売価の変更 | 特売・見切りの売価変更をPOSと売場の表示の両方に反映している | 反映のずれが売価違算やレジでの確認につながりやすい | 推定 |
| 惣菜の生産数の決定 | 前日の売れ方と天候をもとに、担当者が加工数を決めている | 判断の根拠が残らず、廃棄率の振れの原因を後から追いにくい | 推定 |
| 生鮮のロス・見切り | 値引きのタイミングと率を売場の判断で決めている | 判断が人により揃わず、ロス率の比較がしにくい | 推定 |
| 仕入代金の照合 | 納品書・請求書とアラジンオフィスの仕入計上を人が突き合わせている | 差異の発見が月次に寄り、遡り調査が発生しやすい | 推定 |
| POSと会計のつなぎ | スマレジの売上をCSVで出し、Excelを経て弥生会計へ手で転記している | 転記の手戻りが月初に集中し、店舗別の確認に時間がかかる | 推定 |
一覧を眺めると、人手が支えているのは、個々のシステムの中ではなく、システムとシステムの間、またはシステムと記憶の間です。支え方の型は3つに集約されます。電話・FAX・対面の紙で届く仕事を人が読み取って入力していること(電話発注、御用聞きの手書き控え、FAXの本部連絡)、判断に使う知識が記憶と個人の手控えにあること(発注量の勘、精肉・鮮魚の見極め、催事の実績、棚卸差異の当たり)、システム間の照合を人がまとめて行っていること(在庫表と売場、Excelと棚卸実数、スマレジと弥生会計、全店報告の集計)です。これは店長・仕入担当・売場の方々の工夫で10店舗超の運営が成立している姿であり、同時に、その方々に負担が集中する構造でもあります。
診断セッションで確認する点
- 推定の行は、御社にも当てはまりますか。すでに運用や仕組みでカバーされている行はどれですか。
- この一覧に載っていない箇所で、現場の負担になっているものはありますか。
- この中で、時間または金額の影響が最も大きいのはどれですか。
3. As-Is: 発注・在庫ワークフロー
10店舗超の各店で、毎日、部門ごとに翌日分の発注が立てられていると推定します。青果・精肉・鮮魚・惣菜は日次、加工食品・日用品は週数回の発注サイクルが混在する前提で描きます。発注の入口は、八面六臂などのWeb発注が一部、残りは電話・FAX・御用聞きの対面が中心です。
3-1. 店舗の発注業務の1日
| 時刻 | 工程 | 担当 | 備考 |
|---|
| 早朝 | 入荷の検品、納品書の受け取り | 売場担当 | 電話発注分は、届いた品と控えを突き合わせる |
| 午前 | 売場の目視で在庫を確認し、Excel在庫表と照らす | 売場担当・店長 | 売場作業と並行。数量は書き取りで拾う |
| 午前〜昼 | 前日の売れ方をスマレジで確認 | 店長 | 実績と天候・曜日から翌日の必要量を見積もる |
| 昼〜午後 | 発注量の決定 | 店長・仕入担当 | 精肉・鮮魚は仕入担当が判断。他部門は店長が判断 |
| 午後 | 仕入先ごとの締めに合わせて発注 | 店長・仕入担当 | 一部は八面六臂、多くは電話・FAX・御用聞きに手書きの控え |
| 夕方以降 | 発注内容をアラジンオフィスへ入力 | 店長・売場担当 | 入力が翌日に回ることもある |
| 随時 | 発注量の相談・判断の確認 | 売場担当→店長・仕入担当 | 口頭確認。不在時は発注が保留または前回踏襲になる |
ヒアリングでは「仕入先さんとのやり取りは、いまだに電話とFAXが多いです。特に精肉と鮮魚は」とのことでした。
3-2. 発注判断のフロー
flowchart TD
mokushi["売場の目視確認"] --> zaikohyo["Excel在庫表と照合<br>(現在庫の把握)"]
smaregi["スマレジの前日実績"] --> mitsumori["必要量の見積もり<br>(天候・曜日・催事を加味)"]
zaikohyo --> mitsumori
mitsumori -->|"店長が在席・通常商材"| kettei["発注量の決定"]
mitsumori -->|"精肉・鮮魚"| shiire["仕入担当の判断を仰ぐ"]
shiire -->|"在席"| kettei
shiire -->|"不在"| horyu["前回踏襲、または発注を翌日へ送る"]
mitsumori -->|"店長不在・催事や季節商材"| horyu2["経験のある方に電話で相談<br>相談できない場合は前回踏襲"]
horyu2 --> kettei
kettei -->|"Web発注可の仕入先"| web["八面六臂などで発注"]
kettei -->|"それ以外"| denwa["電話・FAX・御用聞きに手書き控え"]
web --> nyuryoku["アラジンオフィスへ入力"]
denwa --> nyuryoku
nyuryoku --> nohin["翌朝の検品で納品と突合"]
nohin -->|"相違あり"| chosei["仕入先へ連絡し、返品・追加を調整"]
3-3. 棚卸差異の調査
Excel在庫表と実数が合わない場合、原因の候補は複数に分かれ、どれから当たるかの見当が人の経験に依存すると推定します。
| 差異の原因の候補 | 現在の確かめ方 |
|---|
| 発注・入荷の入力漏れ、入力の後回し | 納品書の束とアラジンオフィスの記録を遡る |
| 見切り・値引き販売の記録の扱い | スマレジの値引き記録と照らす |
| 廃棄・自家消費・加工転用の記録漏れ | 売場の記録紙と担当者の記憶に当たる |
| 惣菜への原料転用(精肉・鮮魚から) | 加工担当に口頭で確認する |
| 検品時の数量相違の未反映 | 当日の担当者に確認する |
3-4. 診断セッションで確認する点
- Excel在庫表の様式は、店舗ごとに分かれていますか。共通の様式がありますか。
- 発注量の目安(曜日別・天候別・催事の係数など)は、文書として存在しますか。個人の手控えに分かれていますか。
- 電話・FAX・御用聞きで発注している仕入先は、何社ぶんありますか。Web発注に寄せられそうな先はどれですか。
- 廃棄・見切り・原料転用の記録は、どこに残っていますか。
4. As-Is: 本部・店舗間の連絡とシフト・勤怠ワークフロー
本部から10店舗超へ、販促・売価・商品情報・提出依頼が日々流れ、店舗から本部へ日報・在庫・売上・勤怠の報告が返る前提で推定します。
4-1. 連絡と報告の経路
| 流れ | 経路 | 受け手の作業 |
|---|
| 本部→店舗(販促・売価変更) | FAX | 複合機から紙を回収し、売場に回す |
| 本部→店舗(商品情報・依頼) | メール | 店舗のメールを店長が確認する |
| 本部→店舗(急ぎの連絡・確認) | LINE WORKS | トークを追って必要分を拾う |
| 店舗→本部(日報・在庫・報告) | LINE WORKS・メール・Excel添付 | 本部がExcelに転記して全店ぶんを集計する |
| 店舗内(シフト希望) | 紙・チャット・口頭 | 店長がExcelシフト表に手で組み込む |
| 店舗→本部(勤怠) | KING OF TIME | 打刻の修正・確認を店長が行う |
ヒアリングでは「本部からの連絡がFAXとメールとLINE WORKSに分かれてるんで、店舗によっては見落としが起きます」とのことでした。3経路それぞれに未読・未対応の状態があり、どれが自店に来ているかを突き合わせる作業が店舗側に残ります。
4-2. 連絡・報告のデータフロー
flowchart LR
honbu["本部(商品部・管理部)"] -->|"FAX"| tenpo_fax["店舗の複合機・紙"]
honbu -->|"メール"| tenpo_mail["店舗のメール"]
honbu -->|"LINE WORKS"| tenpo_lw["店舗のトークルーム"]
tenpo_fax --> tencho["店長が拾い集める"]
tenpo_mail --> tencho
tenpo_lw --> tencho
tencho -->|"見落ちがあると<br>売価・販促の反映漏れ"| uriba["売場での実施"]
tencho -->|"日報・在庫・報告"| shukei["本部でExcelに転記・全店集計"]
kibo["シフト希望<br>(紙・チャット・口頭)"] --> shifthyo["Excelシフト表<br>店長が手作業で作成"]
shifthyo --> kot["KING OF TIME"]
kesseki["急な欠勤"] -->|"電話・チャットで打診"| help["ヘルプの調整(店長)"]
help --> shifthyo
4-3. シフト作成の流れ
| 工程 | 内容 | 担当 | 備考 |
|---|
| 希望の収集 | 紙・チャット・口頭で集まる | 各スタッフ→店長 | 提出が締め直前に集中する |
| 制約の当てはめ | 部門ごとの必要人数、資格・技能、労働時間の上限 | 店長 | 制約は店長の頭の中にある |
| 表の作成 | Excelシフト表に手で組む | 店長 | 作成が締め直前に集中する |
| 公開 | 印刷・チャットで共有 | 店長 | |
| 欠勤対応 | 打診と差し替え | 店長 | 誰に頼めるかの見当は店長の記憶に依存 |
4-4. 診断セッションで確認する点
- 本部からの連絡のうち、実施の確認(既読・完了)を取っているものはどれですか。
- 全店から集める報告は、何種類・どの頻度で、どなたがまとめていますか。
- シフト作成の制約(部門別の必要人数、技能、時間の上限)は、文書として存在しますか。
- KING OF TIMEの実績は、シフト表とどのタイミングで突き合わせていますか。
5. As-Is: 業務知識の所在と属人性
発注・在庫・店舗運営を成立させている知識の置き場所を整理します。ヒアリングでは「発注の基本的な流れはマニュアルにしてあるんですけど、実際にどれだけ頼むかの判断とか、仕入先さんごとの癖みたいなものは、ほぼ口伝えですね」とのことでした。文書化は一部まで進んでおり、判断の部分が記憶に残っている姿と推定します。
| 業務知識 | 現在の置き場所 | 参照する場面 |
|---|
| 部門別・曜日別の発注量の目安 | 店長の記憶、個人のExcel手控え | 毎日の発注のたび |
| 精肉・鮮魚の発注判断(相場・品質・歩留まり) | 仕入担当の記憶 | 生鮮の発注のたび |
| 季節商材・催事の発注量の見極め | 店長個人の経験、過去の手控え | 催事・季節の立ち上がりごと |
| 仕入先ごとの癖(締め時間、単位、代替の可否、連絡の作法) | 仕入担当・店長の記憶、手書きの控え | 発注・欠品調整のたび |
| 惣菜の加工数と原料転用の考え方 | 惣菜担当の記憶 | 毎日の生産計画時 |
| 見切り・値引きのタイミングと率 | 売場担当の記憶 | 夕方の売場運営時 |
| 棚卸差異の原因の当たりの付け方 | ベテランパートの記憶 | 棚卸のたび |
| シフトの制約(必要人数・技能・時間) | 店長の記憶 | シフト作成・欠勤対応のたび |
| 発注の基本手順 | マニュアル(一部が文書化済み) | 新人の教育時 |
属人性は、担当者が抜けたときに何が止まるかを並べると、そのまま見えてきます。止まるものの一覧は、文書に起こすべき知識の目次でもあります。
| 抜けると止まる・遅れる業務 | 支えている知識 | 現在の担い手 |
|---|
| 翌日の発注量の決定(通常商材) | 曜日・天候・売れ方から必要量を読む勘 | 各店の店長 |
| 精肉・鮮魚の発注 | 相場・品質・歩留まりと仕入先ごとの癖 | 仕入担当の特定スタッフ |
| 季節商材・催事の発注量の見極め | 過去の催事の実績と地域の傾向 | 店長個人の経験 |
| 棚卸差異の原因調査 | 差異の出やすい箇所と確かめる順序 | ベテランのパートスタッフ |
| シフト作成・欠勤時のヘルプ調整 | 各スタッフの技能・都合・頼める相手 | 各店の店長 |
| 新人への発注の指導 | 手順に載っていない判断の部分 | 店舗に一人の指導者 |
発注の判断が店長と仕入担当に集約されているため、休みの調整そのものが業務の制約になっています。文書化の対象は、手順ではなく「判断の材料と、その使い方」に絞られます。
6. As-Is: AI社員を受け入れる土台の現状
2〜5章は業務の流れと知識の姿でした。この章は、AI社員を配属するために必要な土台が現時点でどこまで揃っているか、いわばAI ready度を整理します。まず全体を一覧で示し、システム別の接続の詳細と、◯に変わるまでの道のりを続けます。判定はシステム構成からの推定で、確定は診断セッションで行います。判定の根拠を埋める作業は、付録Aの実装項目に対応づけています。
判定は4値です。◯ 足りている / △ 一部足りている・版による / ✕ これから整える / ? 診断セッションで確認。
| 観点 | 判定 | 根拠 |
|---|
| 業務知識が文書になっているか | △ | 発注の基本手順はマニュアル化済み。数量の判断と仕入先ごとの癖は口伝え(5章) |
| どれを正とするかが決まっているか | △ | 在庫はExcel在庫表と売場の目視、売上はスマレジと運用は安定。どれを正とするかの明文化はこれから |
| 商品・仕入先・店舗のIDの軸が揃っているか | △ | アラジンオフィスの商品・仕入先コードが軸。スマレジの商品マスタとの対応は確認が必要 |
| AIに渡す範囲を区切る権限の土台 | ✕ | 在庫表・発注リスト・シフト表がExcelと個人の手控えに分散し、範囲の区切りがこれから |
| 仕事の入口がデータで届くか | ✕ | 仕入先とのやり取りは電話・FAX・御用聞きの紙が中心。Web発注は一部の仕入先のみ |
| 使っているシステムへの接続 | △ | スマレジ・KING OF TIMEは公式API。アラジンオフィス・弥生会計は版による。八面六臂は画面・帳票からのデータ化(6-1) |
| 承認者・役割を決められるか | ? | 10店舗超で店長の裁量が大きい。発注承認と辞書承認の経路は診断セッションで確認 |
✕と△が並びますが、いずれも第一・第二工程で埋まる種類のもので、どの工程で◯に変わるかは6-2に対応表があります。
6-1. 接続手段
接続のしやすさの列は、当社カタログの一般情報(◎ 公式APIが充実 / ○ APIあり / △ 版・契約による / ✕ 手作業前提)で、確定は導入時に版・契約を確認して行います。
| 項目 | 接続のしやすさ | 現状(推定) | 配属に足りているか | 足りない場合に埋める作業 |
|---|
| アラジンオフィス | △ CSV・連携オプションが中心(契約による) | 版・契約による。API連携またはファイル連携 | 版の確認が必要 | 版が分かれば接続方式と可否を当社から提示(付録A C-02) |
| スマレジ | ◎ 公式のプラットフォームAPIが公開されている | 売上・商品・在庫の参照が可能 | 足りている | |
| KING OF TIME | ◎ 公式APIあり | 打刻・勤怠実績の参照が可能 | 足りている | |
| LINE WORKS | ○ APIあり | 接続手段あり。本部・店舗の連絡が寄っている | 足りている | |
| 弥生会計 | △ デスクトップ版はファイル連携中心(クラウド版は連携範囲を確認) | 版により接続手段が異なる | 版の確認が必要 | 同上(付録A C-02) |
| 八面六臂 | ✕ 公開APIなし。発注画面・帳票からのデータ化 | Web発注は画面操作。発注控えは帳票 | 一部不足 | 発注控え・帳票のデータ化と取り込み方式の設計(付録A C-05) |
| Excel(在庫表・発注リスト・シフト表・全店集計) | ✕ データ化から始める | 店舗ごとに様式が分かれている可能性 | 不足 | 様式の突き合わせと共通項目の定義、置き場所の一元化(付録A C-04) |
| FAX(仕入先・本部連絡) | ✕ 紙のまま | 紙のまま回収 | 不足 | 複合機のPDF転送設定またはクラウドFAX(付録A C-01) |
| 電話・御用聞き(対面・手書き控え) | ✕ 口頭・紙のまま | 記録が残らない、または手書き控えのみ | 不足 | 発注内容を記録する入口の用意、Web発注に寄せられる先の整理(付録A C-03) |
6-2. AI readyまでの道のり
冒頭の一覧で✕と△が付いた観点は、10章の導入ステップの中で次の順に◯へ変わります。
| 工程 | ◯に変わる観点 | 具体 |
|---|
| 第一工程 | 仕事の入口 / システムへの接続 / 権限の土台 / IDの軸 | FAXのPDF化と発注記録の入口を用意して入口をデータにする。スマレジ・KING OF TIME・LINE WORKSをAPIで、アラジンオフィス・弥生会計は版を確認して接続する。Excel在庫表・発注リスト・シフト表の様式を突き合わせ、置き場所と参照範囲を整理する。アラジンオフィスとスマレジの商品マスタの対応表を作る |
| 第二工程 | 業務知識の文書化 / 正の明文化 | 個人の手控えの取り込みと、店長・仕入担当・ベテランへのヒアリングで発注判断の材料と仕入先ごとの癖を意味辞書・業務マニュアルに起こす。在庫・売上・仕入のどれを正とするかを明文化する。以後は例外判断のたびに追記されて厚くなる |
| 第三工程 | 残る ? の確定 | 発注の承認者、意味辞書の承認者、店舗側の教育係の指名を確定し、対象業務(シフト・全店報告)を広げる |
6-3. この章の読み方
足りない項目が並びますが、いずれも第一工程(10章)の中で当社が主導して埋める種類の作業で、御社の業務を止めるものはありません。埋める作業の中身と順序は、業務の実物を拝見しないと確定できないため、診断セッションの議題とします。
スマレジ・KING OF TIME・LINE WORKSに公式のAPIがあり、売上実績・勤怠・連絡の3つがデータで取れることは、この規模の小売業では恵まれた条件です。発注量の判断に使う材料(売れ方・在庫・天候・催事)のうち、売れ方はすでにデータで存在します。整備の中心は、電話・FAX・対面の入口のデータ化と、Excelと記憶に散らばる在庫・発注判断の辞書化の2つに絞られます。
7. To-Be: 発注・在庫ワークフロー(AI社員配属後)
配属後の姿は、御社固有の情報(商品と仕入先の対応、店舗ごとの在庫表の読み方、部門別の発注量の目安、催事の実績、シフトの制約)を整理したうえに成り立ちます。この章の直前に差し込んだ立体の地図は、その整理の成果物の姿です。下段が情報の置き場所(接続に導入時の確認が要るものは接続候補と表示)、中段が御社の業務で共通に扱う実体とその関係、上段がAI社員に任せる仕事です。上段の仕事を選ぶとその仕事が使う実体・元データ・読み替えが光り、実体を選ぶと判断材料がどこから来てどの仕事につながるかをたどれます。実体をつなぐ線は、システムに記録済みのつながり、導入で整理して作るつながり、合っているかを照合するつながりの3種に分かれます。
そのうえで、2章で挙げた人手の支えを、それぞれどこでAI社員が引き継ぐかを対応づけます。
| 2章で挙げた箇所 | 配属後 |
|---|
| 翌日の発注量の決定(店長の勘) | 発注担当AIが売れ方・在庫・曜日・天候・催事から発注案を作り、店長が確認する(この章) |
| 精肉・鮮魚の発注(仕入担当への依存) | 仕入担当の判断材料を辞書化し、発注担当AIが案を提示。相場と品質の最終判断は人に残す(この章) |
| 電話での発注・受注の聞き間違い | 発注内容をAIが記録して発注控えを作り、納品時の突合をAIが行う(この章) |
| 在庫の目視確認とExcel在庫表の照合 | 発注担当AIが在庫表・入荷・POS販売から理論在庫を出し、目視は差異が出た棚に絞る(この章) |
| 棚卸差異の原因調査 | 差異の候補を発注担当AIが日次で検知し、原因の当たりを付けた一覧を出す(この章) |
| シフト作成の手作業 | 店舗運営AIが希望と制約からシフト案を作り、店長が調整する(8章) |
| 急な欠勤時のヘルプ調整 | 店舗運営AIが打診候補と連絡文の下書きを提示する(8章) |
| 本部連絡の3経路と見落とし | 店舗運営AIがFAX・メール・LINE WORKSを一本の未対応一覧にまとめる(8章) |
| 発注の教育(店舗に一人の指導者) | 業務マニュアルと意味辞書が教材になり、AIの発注案が判断の根拠を示す(10章の残る資産) |
| 全店の報告集計 | 店舗運営AIが日次で集計し、本部へ報告する(8章) |
| 発注実績のアラジンオフィスへの入力 | 発注担当AIが起票し、入力の後回しをなくす(この章) |
| 値入・売価変更の反映 | 本部連絡から売価変更の依頼を抽出し、店舗運営AIが未実施を検知する(8章) |
| 惣菜の生産数の決定 | 前日実績と天候から発注担当AIが加工数の案を出す(この章。原料転用の扱いは診断セッションで確認) |
| 生鮮のロス・見切りの判断 | 値引きの実績をAIが記録・集計し、判断の目安を辞書に育てる(この章) |
| 仕入代金の照合 | 発注・納品・仕入計上の三者照合を発注担当AIが日次で行う(この章) |
| POSと会計のつなぎ | 店舗運営AIがスマレジとアラジンオフィス・弥生会計の突合を日次で行う(8章) |
7-1. 配属案
| 業務 | 現状の担当 | 配属後の担当 | 人の役割 |
|---|
| 理論在庫の算出と在庫表の更新 | 売場の目視+Excel在庫表 | 発注担当AI | 差異が出た棚の実地確認 |
| 翌日の発注量の案の作成 | 店長の経験と勘 | 発注担当AI(意味辞書の目安と売れ方から算出) | 案の承認と、勘に基づく修正 |
| 精肉・鮮魚の発注案 | 仕入担当の特定スタッフ | 発注担当AI(辞書の判断材料を参照) | 相場・品質の最終判断 |
| 発注の記録とアラジンオフィスへの起票 | 手書き控え+後からの手入力 | 発注担当AI | 例外の判断 |
| 納品と発注の突合 | 検品時の目視と控えの照合 | 発注担当AI | 相違時の仕入先への連絡 |
| 棚卸差異の原因の絞り込み | ベテランパートの調査 | 発注担当AI(候補と根拠を提示) | 最終的な原因の確定 |
7-2. 発注担当AIの職務定義
| 項目 | 内容 |
|---|
| 職務 | 理論在庫の算出、部門別の発注案の作成、発注の記録とアラジンオフィスへの起票、納品との突合、棚卸差異の候補検知、仕入計上の三者照合 |
| 接続先 | アラジンオフィス、スマレジ、LINE WORKS、Excel(在庫表・発注リスト)、FAX受信、八面六臂の発注控え |
| 単独で実行できる操作 | 理論在庫の算出、発注案の作成と提示、発注済み内容の記録、納品との突合、差異一覧の作成 |
| 人の承認が必要な操作 | 発注の確定、意味辞書の目安の変更、仕入先への相違連絡、棚卸差異の原因の確定 |
| 勤務形態 | 毎朝、前日実績の取り込みと理論在庫の更新。仕入先の締め時間に合わせて部門別に発注案を提示。夕方に差異と未処理の一覧を報告 |
7-3. 配属後の発注フロー
flowchart TD
smaregi["スマレジの販売実績"] --> ai["発注担当AIが理論在庫を算出"]
nyuka["入荷・検品の記録"] --> ai
haiki["廃棄・見切り・原料転用の記録"] --> ai
ai --> an["発注案の作成<br>(部門別の目安・曜日・天候・催事を参照)"]
an -->|"辞書の目安の範囲内"| teiji["店長・仕入担当へ発注案を提示<br>(根拠つき)"]
teiji -->|"承認"| kihyo["アラジンオフィスへ発注を起票<br>Web発注可の先は八面六臂へ"]
teiji -->|"修正"| shusei["数量を修正して承認"]
shusei --> kihyo
shusei --> tsuiki["修正の理由を意味辞書に追記<br>(版管理)"]
an -->|"目安の範囲外<br>(相場変動・新商品・催事の初回)"| hokoku["例外としてLINE WORKSで報告<br>(論点と過去の実績を整理して提示)"]
hokoku --> handan["店長・仕入担当が判断"]
handan --> tsuiki
tsuiki -.->|"以後、同型の判断はAIが案に反映"| ai
kihyo --> denwa["電話・対面の発注は<br>AIが作った発注控えを人が読み上げ・提示"]
denwa --> nohin["翌朝、納品をAIが発注内容と突合"]
nohin -->|"相違あり"| renraku["相違一覧と連絡文の下書きを提示"]
ai --> sai["棚卸差異の候補を日次で検知<br>(入力漏れ・値引き・転用・検品相違の別に整理)"]
発注はAIが決めるのではなく、AIが根拠のある案を出し、人が確定する形にします。電話・対面の発注は当面人が行い、AIが読み上げ用の発注控えを作って記録を残すところから始めます。これにより、聞き間違いがあった場合も、発注時点の内容が文字で残ります。
7-4. 配属後の店舗の1日
| 時刻 | 工程 | 担当 |
|---|
| 早朝 | 前日の販売実績の取り込みと理論在庫の更新が完了 | 発注担当AI |
| 早朝 | 納品と発注内容の突合結果、相違一覧がLINE WORKSに届く | 発注担当AI→売場担当 |
| 午前 | 部門別の発注案が根拠つきで届く。目視確認は差異が出た棚に絞る | 発注担当AI→店長・売場担当 |
| 昼〜午後 | 発注案の確認と修正、締め時間に合わせた確定 | 店長・仕入担当 |
| 確定後 | アラジンオフィスへの起票、Web発注、電話用の発注控えの作成 | 発注担当AI |
| 夕方 | 棚卸差異の候補、未反映の記録、未処理の一覧を報告 | 発注担当AI |
| 随時 | 修正の理由をマニュアル・辞書に反映 | 店長・発注担当AI |
例外の比率は導入初期が最も高く、店長や仕入担当が修正した理由が辞書へ追記されるため、運用とともに下がる構造です。店長が休んだ日も、発注案と根拠が残っている状態から始められます。
8. To-Be: 本部・店舗間の連絡とシフト・報告ワークフロー(AI社員配属後)
8-1. 店舗運営AIの職務定義
| 項目 | 内容 |
|---|
| 職務 | 本部連絡の一元化と未対応の検知、シフト案の作成、欠勤時の打診候補の提示、全店報告の日次集計、スマレジとアラジンオフィス・弥生会計の突合 |
| 接続先 | LINE WORKS、メール、FAX受信、KING OF TIME、スマレジ、アラジンオフィス、弥生会計、Excel(シフト表・全店集計) |
| 単独で実行できる操作 | 連絡の集約と未対応一覧の作成、シフト案の作成、打診候補と連絡文の下書き、全店集計と報告、突合の実行と差異一覧の作成 |
| 人の承認が必要な操作 | シフトの確定、ヘルプの依頼、差異の最終判断、仕訳の確定 |
| 勤務形態 | 本部連絡は着信の都度。全店集計と突合は毎日夕方に定時実行。シフト案はシフト作成の周期に合わせて実行 |
8-2. 本部連絡の一元化
flowchart LR
fax["FAX(PDF化)"] --> ai["店舗運営AIが読み取り・分類"]
mail["メール"] --> ai
lw_in["LINE WORKS"] --> ai
ai --> ichiran["店舗別の未対応一覧<br>(依頼内容・期限・対象部門)"]
ichiran --> lw_out["LINE WORKS の店舗トークルームへ通知"]
lw_out --> jissi["店舗での実施"]
jissi -->|"完了の記録"| ai
ai -->|"期限が近い・未完了"| saikoku["リマインドと本部への状況報告"]
ai -->|"売価変更の依頼"| baika["スマレジの売価との照合<br>未反映を検知"]
3経路に分かれて届く連絡が、店舗ごとに一本の未対応一覧に集約されます。店舗側は経路を追う作業から、一覧を消していく作業に変わります。
8-3. シフトと勤怠
| 工程 | 配属後 | 担当 |
|---|
| 希望の収集 | LINE WORKS上で提出を受け付け、未提出者にAIがリマインドする | 店舗運営AI |
| シフト案の作成 | 部門別の必要人数・技能・時間の上限を辞書から参照して案を作る | 店舗運営AI |
| 調整と確定 | 案を店長が調整して確定する | 店長 |
| 欠勤対応 | 技能・勤務可能時間・直近の勤務実績から打診候補と連絡文の下書きを提示 | 店舗運営AI→店長 |
| 勤怠の確認 | KING OF TIMEの実績とシフトの差、打刻漏れをAIが日次で検知 | 店舗運営AI |
8-4. 全店報告と会計のつなぎ
| 頻度 | 工程 | 担当 |
|---|
| 毎日 | 各店の売上・在庫・廃棄・特記事項を集計し、本部へ報告 | 店舗運営AI |
| 毎日 | スマレジの売上とアラジンオフィスの計上の突合、差異の検知 | 店舗運営AI |
| 毎日 | 発注・納品・仕入計上の三者照合(発注担当AIと連携) | 店舗運営AI・発注担当AI |
| 月次 | 弥生会計への計上額の照合。差異一覧と根拠を提示 | 店舗運営AI→管理部 |
| 棚卸前 | 差異の出やすい商品・売場の候補を提示 | 発注担当AI |
8-5. 時間の変化(推定)
| 項目 | 現状 | 配属後 |
|---|
| 在庫確認 | 売場の目視とExcel在庫表の照合を毎日実施 | 理論在庫が更新済み。目視は差異が出た棚に絞る |
| 発注量の決定 | 店長・仕入担当の判断から始める | 根拠つきの案から始まり、修正と承認に変わる |
| 店長・仕入担当の不在時 | 精度が落ちる、または発注が翌日に送られる | 案と根拠が残り、他の方でも確認から入れる |
| 電話発注の聞き間違い | 納品時に発覚し、突合に時間がかかる | 発注控えが文字で残り、突合はAIが行う |
| 棚卸差異の原因調査 | 棚卸後にまとめて遡る | 日次で候補が出ており、調査範囲が絞られている |
| シフト作成 | 希望が集まってから手作業で組む | 案の調整から始まる |
| 本部連絡の確認 | 3経路をそれぞれ追う | 一本の未対応一覧を消していく |
| 全店報告の集計 | 店舗数に比例して時間が伸びる | 日次で集計済み。本部は内容の確認から始まる |
| 新人の発注教育 | 指導者に横についてもらう | マニュアル・辞書とAIの案の根拠が教材になる |
実数の測定は、試用期間中に御社の店舗と帳票で行います(付録B)。
9. システム構成(To-Be)
flowchart TD
aladdin["アラジンオフィス"] --> madoguchi
smaregi["スマレジ"] --> madoguchi
kot["KING OF TIME"] --> madoguchi
yayoi["弥生会計"] --> madoguchi
excel["Excel<br>在庫表・発注リスト・シフト表"] --> madoguchi
hachimen["八面六臂<br>発注控え・帳票"] --> madoguchi
faxin["FAX受信 / メール"] --> madoguchi
madoguchi["各システムとAIの間の窓口(システムごとに設置)<br>・アクセスできる範囲の制御(権限)<br>・全操作の記録(監査ログ)<br>・意味辞書(商品コードの対応、発注量の目安、仕入先ごとの癖、正となる数字の定義)"]
madoguchi --> hacchuAI["発注担当AI"]
madoguchi --> tenpoAI["店舗運営AI"]
hacchuAI -->|"発注案・差異報告・例外照会"| lw["LINE WORKS"]
tenpoAI -->|"未対応一覧・シフト案・全店報告"| lw
lw <-->|"判断・承認"| hito["店長・仕入担当・本部"]
- 既存システムの入れ替えは行いません。アラジンオフィス・スマレジ・KING OF TIME・弥生会計・八面六臂は現行のまま、AI専用の窓口を追加します。
- Excelで管理している在庫表・発注リスト・シフト表は、様式を突き合わせて共通の項目を定めたうえで窓口から参照します。運用中の帳票をそのまま使えるようにします。
- AIがシステムに触れる経路は窓口だけに限定され、窓口を通らないアクセスはできません。
意味辞書に登録する内容の一覧は、付録A-2にまとめています。
10. 導入ステップ
第一工程の内容は、6章で足りないとした項目にそのまま対応します。10店舗超あるため、まず1〜2店舗で始め、店舗を広げる形を取ります。
| 工程 | 内容 | この時点で使える状態 |
|---|
| 第一工程 | 窓口の接続(スマレジ・KING OF TIME・LINE WORKS・アラジンオフィス・弥生会計・Excel・FAX受信)と意味辞書の初期整備 | 店舗ごとに散らばった売上・在庫・発注・連絡を、意味を踏まえて横断検索・集計できる |
| 第二工程 | 発注担当AIの配属。試行店舗の一部部門(加工食品など日配以外)から開始し、生鮮へ広げる | 理論在庫と発注案が毎日出る。人は確認・修正と生鮮の判断に移る |
| 第三工程 | 店舗運営AIの配属、対象店舗と業務の拡大 | 本部連絡の一元化、シフト案、全店報告の日次化 |
導入後に社内に残るものは次の3点で、いずれもファイルの形を持ちます。
- 業務マニュアル。発注判断の材料と例外対応の追記を含む、版管理された手順書
- 意味辞書。商品コードの対応、部門別の発注量の目安、仕入先ごとの癖などのデータの読み方の登録集
- 監査ログ。AIがいつ何を参照しどの操作をしたかの全記録
新人への発注の指導が店舗に一人の方に集まっている状況に対しては、この1と2がそのまま教材になります。利用をやめた場合も、この3点は読める形式のファイルとして手元に残ります。
他の手段との比較
| 外注(BPO) | RPA・AI-OCR | Copilot | AI社員 |
|---|
| 例外が起きたとき | 委託先が対応する | 処理が止まり、人が拾う | 人が操作して対処する | 人が判断し、判断結果が手順に追記される |
| ノウハウの残り先 | 委託先の会社 | 設定した担当者 | 使った個人 | 自社の業務マニュアルと意味辞書 |
| 記録 | 委託先の管理に依存 | 実行ログのみ | 残らない | 全操作の監査ログ |
| やめたとき | ノウハウごと失われる | 設定だけが残る | — | マニュアル・辞書・ログがファイルで残る |
導入後も続く運用
業務は変わり続けます。新規出店、仕入先の入れ替え、季節と催事の巡り、使用システムの更新。月額利用の中では、例外判断のマニュアル・辞書への反映、接続先の変化への追従、対象店舗と任せる業務の拡張が続きます。AI社員の仕事の範囲は、配属時の定義から運用の中で広がっていきます。
実装項目の一覧は付録A、試用期間の検証計画は付録Bにまとめています。
11. セキュリティ設計
11-1. データの経路と実行の条件
| データ | 通る経路 | 通らない経路 |
|---|
| 発注・在庫・売上データ | 窓口を経由してAI社員が参照 | 外部AIモデルの学習には使用しない |
| 仕入先・原価情報 | 権限のある範囲でのみ参照 | 権限のない参加者がいる場では表示しない |
| 勤怠・シフトの個人情報 | 店舗と本部の権限の範囲でのみ参照 | 他店舗の担当者には表示しない |
| AIモデルの利用 | 処理に必要な範囲のデータを推論時にAIモデルへ渡す | 学習・保存には使われない設定で利用。要件に応じてプライベート環境にも対応 |
| 実行記録 | 監査ログとして自社環境に保存 | 社外に送信しない |
- システム操作の実行は、依頼した本人・その場に同席する全員・AI社員自身の3者すべてに権限がある場合に限られ、未登録の操作・身元不明の参加者は拒否が既定値です。
- 発注の確定・売価の変更・シフトの確定などの重要操作には人の承認が必ず挟まり、許可・拒否を問わずすべての実行が監査ログに残ります。
- 店舗ごとの参照範囲を設定でき、自店のデータと本部が許可した範囲に限定できます。
- 提供環境は1社ごとに独立し、他社とデータベースを共有しません。
11-2. 導入時によく確認される事項
| 確認事項 | 回答 |
|---|
| データの保存先と環境分離 | 1社1環境で提供。保存先と取り扱いは導入時に書面で明示。詳細資料は診断セッションで提供 |
| 勤怠・シフトの個人情報の扱い | 参照範囲を店舗・役職単位で区切る設計。取り扱う項目を導入前に書面で確定 |
| 店舗ごとの運用の違いへの対応 | 共通の部分を辞書に、店舗固有の部分を店舗別の設定に分けて持つ |
| 既存のCopilot等との関係 | 併存。個人の文書作成はそれらのツール、担当業務の遂行はAI社員と役割が分かれる |
| 例外の多い業務への適用 | 頻出の例外はマニュアルに載せ、一点物の判断は人に残す。載る範囲と載らない範囲の線引きを導入前に文書で提示 |
| 解約時のデータ | 業務マニュアル・意味辞書・監査ログは読める形式のファイルとして残る |
| 診断セッションの参加者 | 技術担当が同席。希望に応じてNDA締結後に実施。議題は事前に固定 |
12. 提供体制
| 場面 | 当社が行うこと | 御社にお願いすること |
|---|
| 導入(第一工程) | 窓口の接続、Excel様式の突き合わせ、意味辞書の初期整備、店舗業務の聞き取りと観察 | 業務知見の提供(ヒアリング対応)、正とするルールの判断 |
| 導入(第二工程) | 発注担当AIの設定、業務マニュアルの初稿作成、試用店舗での試用期間の運営 | 発注案の確認と修正、マニュアル内容の承認 |
| 導入(第三工程) | 店舗運営AIの設定、対象店舗への展開の支援 | 店舗側の受け入れ体制の調整 |
| 運用開始後 | 定例の振り返り、例外傾向の分析、任せる業務の拡張提案、接続先の変化への追従 | 判断と承認の継続 |
導入から運用まで、技術担当と導入支援担当が付きます。問い合わせは担当窓口に一本化します。
13. 御社版の作成にあたって
本書は架空企業のサンプルです。2〜6章のAs-Isはシステム構成からの推定であり、御社の実際の業務・数字・例外ルールを反映していません。
御社版の作成は、30分の診断セッションから始めます。セッションでは次の3点を持ち帰っていただけます。
- 2章の一覧を御社の実際に合わせて確定した、人手が支えている箇所の一覧表
- お使いのシステムの版に応じた、接続方式と可否の回答(アラジンオフィス・弥生会計の版、八面六臂の発注控えの形式を含む)
- どの店舗・どの部門から、どんな体制で、どの程度の規模感で始められるかの初期見立て
セッションは技術担当が同席し、ご希望に応じてNDA締結後に実施します。議題は事前にお送りする内容に固定します。お申し込みは、ブースの担当者にお声がけください。
(セッションを予約されない場合、こちらからの営業連絡は行いません。)
付録A. 実装項目
実装の中心は、各システムとAIの間の窓口(標準規格MCPによる接続)の構築と、業務ナレッジ(意味辞書・業務マニュアル)の整備の2つです。項目をID付きで整理します。
A-1. 窓口の接続
| ID | 接続先 | 実装内容 | 読み書きの範囲 | 工程 |
|---|
| M-01 | スマレジ | 売上実績・商品マスタ・売価の参照 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-02 | KING OF TIME | 打刻・勤怠実績・従業員情報の参照 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-03 | LINE WORKS | 本部連絡・店舗報告の取得、発注案・未対応一覧・承認依頼の送受信 | 送受信 | 第一 |
| M-04 | アラジンオフィス | 在庫・発注・仕入の参照と発注起票。接続方式は利用中の版・契約により異なる | 参照+発注起票。確定は承認付き | 第一〜第二 |
| M-05 | 弥生会計 | 計上額・残高の参照 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-06 | Excel(在庫表・発注リスト・シフト表・全店集計) | 様式を定めたうえでの読み取りと更新 | 参照+指定シートへの書き込み | 第一〜第三 |
| M-07 | FAX受信 | 複合機からのPDF転送を受けて本部連絡・仕入先帳票を取り込む | 読み取りのみ | 第一 |
| M-08 | メール | 本部連絡・仕入先メールと添付の取得 | 読み取りのみ | 第一 |
| M-09 | 八面六臂 | 発注控え・帳票からの発注実績の取り込み(公開APIがないため画面・帳票経由) | 読み取りのみ | 第二 |
すべての窓口に、アクセス範囲の制御と全操作の記録が標準で備わります。既製の接続部品がある接続先はそれを使い、ない接続先は個別に開発して納品します。
A-2. 意味辞書の整備
| ID | 辞書 | 内容 | 整備の方法 |
|---|
| D-01 | 商品コードの対応 | アラジンオフィスの商品コード、スマレジの商品マスタ、店舗の在庫表の表記の対応 | マスタの突き合わせと、売場担当へのヒアリングで補完 |
| D-02 | 部門別・曜日別の発注量の目安 | 部門・商品群ごとの基準量、曜日と天候の係数、催事の上乗せ | 個人のExcel手控えの取り込みと、店長へのヒアリング |
| D-03 | 生鮮の発注判断の材料 | 精肉・鮮魚の相場の見方、品質の基準、歩留まりの目安、代替の可否 | 仕入担当へのヒアリングと過去の発注実績からの抽出 |
| D-04 | 仕入先ごとの癖 | 締め時間、発注単位、最低ロット、連絡経路と作法、欠品時の代替 | 手書き控えの取り込みと、仕入担当・店長の手控えの文書化 |
| D-05 | 惣菜の生産と原料転用 | 加工数の目安、精肉・鮮魚からの転用の記録の付け方 | 惣菜担当へのヒアリング |
| D-06 | ロス・見切りの目安 | 値引きのタイミングと率、部門ごとの考え方 | 売場担当へのヒアリングとスマレジの値引き実績からの抽出 |
| D-07 | 棚卸差異の原因の型 | 差異が出やすい箇所と、確かめる順序 | ベテランパートへのヒアリングと過去の棚卸記録 |
| D-08 | シフトの制約 | 部門別の必要人数、技能・資格、勤務可能時間、時間の上限 | 店長へのヒアリングとKING OF TIMEの実績 |
| D-09 | 正となる数字 | 在庫・売上・仕入の正はどのシステムのどの値か、計上のタイミング | 本部管理部・店長へのヒアリング |
A-3. 業務マニュアルの整備
| ID | マニュアル | 内容 |
|---|
| K-01 | 発注処理 | 理論在庫の確認から発注案の確認・確定・起票までの手順と、AIが単独で進めてよい条件 |
| K-02 | 生鮮の発注 | 精肉・鮮魚の判断の手順と、人が判断を残す範囲 |
| K-03 | 例外対応 | 例外の型(相場変動・新商品・催事の初回・納品相違)ごとの報告先と判断の記録方法 |
| K-04 | 在庫と棚卸 | 理論在庫の更新、廃棄・見切り・転用の記録、差異調査の手順 |
| K-05 | 本部連絡の運用 | 未対応一覧の消し方、完了の記録、売価変更の反映確認 |
| K-06 | シフト運用 | 希望の提出、シフト案の調整、欠勤時の打診の手順 |
| K-07 | 追記の運用 | 例外判断や発注案の修正の理由をマニュアル・辞書へ反映する手順と版管理 |
| K-08 | 新人向け発注教育 | K-01〜K-03と意味辞書を使った独り立ちまでの流れ |
A-4. AI社員の設定
| ID | 項目 | 内容 |
|---|
| A-01 | 発注担当AIの定義 | 職務・接続先・権限・勤務形態(毎朝の理論在庫更新+仕入先の締めに合わせた発注案の提示+夕方の差異報告) |
| A-02 | 店舗運営AIの定義 | 職務・接続先・権限・勤務形態(本部連絡は着信の都度、全店集計と突合は毎夕、シフト案は作成周期に合わせて) |
| A-03 | 承認フロー | 発注の確定・売価変更・シフト確定・仕入先への相違連絡をLINE WORKS上で承認する経路の設定 |
| A-04 | 店舗別の設定 | 店舗ごとの部門構成・在庫表の様式・仕入先の違いを、共通の辞書と店舗別設定に分けて保持 |
A-5. 開始前に一緒に確認する事項
いずれも第一工程の中で当社が主導して進めます。御社に単独でお願いする作業はありません。
| ID | 項目 | 内容 |
|---|
| C-01 | FAXのデータ化 | 複合機のPDFメール転送設定、またはクラウドFAXの導入 |
| C-02 | システムの版の確認 | アラジンオフィス・弥生会計の版(クラウド/デスクトップ)をお知らせいただければ、接続方式と可否を当社から提示します |
| C-03 | 電話・対面発注の扱い | 当面は人が発注し、AIが作った発注控えで記録を残す運用とする。Web発注に寄せられる仕入先の整理を診断セッションで相談 |
| C-04 | Excel帳票の整理 | 在庫表・発注リスト・シフト表の様式を店舗間で突き合わせ、共通項目の定義と置き場所・参照範囲の確定 |
| C-05 | 八面六臂のデータ化 | 発注控え・帳票の形式の確認と、取り込み方式の設計 |
| C-06 | 商品マスタの対応 | アラジンオフィスとスマレジの商品コードの対応表の作成 |
| C-07 | アカウントの発行 | AI社員用のアカウントと、店舗別のLINE WORKSトークルームの用意 |
| C-08 | 役割の任命 | 教育係、発注案の承認者、意味辞書の内容を承認する担当、店舗側の窓口の指名 |
A-6. 非機能要件
環境の独立と監査ログの扱いは11章のとおりです(保持期間は導入時に取り決めます)。
| 項目 | 内容 |
|---|
| 稼働時間帯 | 定時実行(朝・仕入先の締め前・夕)と着信の都度処理。時間帯は店舗別に設定で変更できる |
| 停止時の業務継続 | 窓口が停止した場合は従来の手作業手順に戻れる。業務データは既存システムとExcelの側にあり失われない |
| 追跡 | 発注1件ごとに、参照した実績・在庫・辞書の値、提示した案、承認、起票の履歴を遡って確認できる |
| 店舗数の増加 | 新規出店時は店舗別設定の追加で対応し、共通の辞書は流用できる |
付録B. 試用期間(PoC)の検証計画
導入は試用期間として小さく始め、開始前に合意した水準で本番化を判定します。
B-1. 試用期間の範囲
| 項目 | 内容 |
|---|
| 対象店舗 | 1〜2店舗から開始し、順次拡大 |
| 対象業務 | 発注担当AIによる理論在庫の算出と発注案の作成。店舗運営AIは発注の本番化後に着手 |
| 対象部門 | 加工食品・日用品などサイクルの安定した部門から開始し、青果・惣菜、精肉・鮮魚へ広げる |
| 期間 | 4〜6週間 |
| 運用形態 | 並走運用。従来の目視確認と発注判断を続けながらAIの案と突き合わせ、精度を見ながら目視の範囲を段階的に絞る |
| 体制 | 教育係1名、発注案の承認者(店長・仕入担当)、週次の振り返り30分 |
B-2. 検証項目と指標
本番化の水準は試用期間の開始前に合意し、文書に残します。表の水準は例です。
| 検証項目 | 指標 | 測定方法 | 本番化の水準(例) |
|---|
| 理論在庫の一致 | 理論在庫と実地確認の数量が一致した品目の割合 | 抽出棚の実地確認との突合 | 対象部門で継続的に高い水準 |
| 発注案の妥当性 | 人の修正なしで確定できた発注案の割合 | 承認記録の週次集計 | 対象部門で8割以上 |
| 修正の理由の蓄積 | 修正時に理由が辞書へ追記された割合 | 版管理の履歴 | 追記が継続している |
| 例外の収束 | 例外として人に回った件数の週次推移 | 例外報告の件数集計 | 週を追って低下 |
| 発注記録の正確さ | 納品と発注内容の相違件数、および発見のタイミング | 突合結果とアラジンオフィスの記録 | 相違が納品当日に把握できる |
| 棚卸差異 | 差異の候補提示から原因が特定できた割合と調査時間 | 棚卸前後の実測 | 調査範囲が絞られている |
| 担い手の広がり | 店長・仕入担当以外が発注を確定できた日数 | 承認記録 | 不在日でも発注が止まらない |
| 業務時間 | 在庫確認と発注作成にかかる時間 | 試用期間前後の実測 | 目視と手作業分が減少 |
| 統制 | 承認の通過漏れと、監査ログでの追跡可否 | ログの抽出検査 | 漏れゼロ、全件追跡可 |